警官狙いの連続猟奇殺人犯に恋人を殺されたFBI捜査官のスタローンは警官専用の精神回復施設D-TOXに入り治療に臨むのだが…というスタローン主演作の中ではかなり暗い雰囲気の作品です。
恋人の亡き骸を目にしてスタローンが泣き崩れるシーンが冒頭に置かれている時点で、本作がこれまでの彼の主演作のような観終わった後に胸が熱くなりスカッとするタイプの筋肉アクション映画ではないことが判明します。今振り返ってみると本作が公開された2002年頃は筋肉アクション俳優たちにとって1番の冬の時代で、スタローンとしてもそれまで作ってきた作品群や自身に向けられたイメージからの脱却を計ろうとして、様々なジャンルにチャレンジしたい時期だったのだと考えられます。しかし、もがいて手を出したジャンルなだけあって本作に終始漂う陰鬱な雰囲気やちっとも気持ち良くなれないアクションシーンはやはりスタローンには似合わない、と言うかスタローン映画を観てる気がしませんでした。
スタローン主演作は彼の大活躍が主軸にあるからこそ細かいことには目を瞑って楽しむことができるのですが、そんな彼らしさを捨て去った本作は物語の大きな推進力を欠いており、その代わりにストーリーを綿密に作り上げた訳でもないため、ただ鈍重で暗く楽しくもない時間が延々と続いてしまいます。せめてもう少し周りの登場人物のバックストーリーを深掘りしたり、サスペンスに繋がる様な疑わしい行動を増やしてみたり、犯人を推理するためのヒントを散りばめてみたり、何かしら観客を楽しませる工夫が欲しかったところです。ラストに待ち受ける泥臭いアクションからもカタルシスは感じられず、後味の悪さは拭い切れませんでした。
スタローンファンとして普段と違った彼の一面を見ることができた嬉しさはあったし、この時期に色々試しておいたからこそ後年は方向性を間違えずに突き進めている気もするので、価値のある作品だったとは思います。そしてこの手の終始暗い作品、今のスタローンがやったらまた違った化学反応が起きるんじゃないかなぁ…と微かな期待も募らせております🙌