岡田拓朗

戦場のメリークリスマスの岡田拓朗のレビュー・感想・評価

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)
4.0
終戦の日ということで。
「メリークリスマス ミスターローレンス(曲)」がとても好きで、この作品も観たいと思っていました。

キャスト陣の演技云々は置いといて、内容はこれまた他の戦争映画とは違って視点や切り口で個人的にとてもよかった。

この作品が日本人監督監修で、諸外国との合作映画で成り立ったものであると思うと震える。
正直内容的に、日本のみで作るのは予算的な面や外への見え方含め、難しかったんだろうなとは思う。
相当な覚悟で作品化された気がする。
作品にしてくれて、世に出してくれて感謝です。

戦争映画ではあるものの、どちらかというとヒューマンドラマ要素が強い。

1942年、日本統治下にあるジャワ島レバクセンバタの日本軍俘虜収容所が舞台。
当時の日本軍と外国人俘虜(捕虜)が中心に話が展開されていく。

日本語を解する俘虜の英国陸軍中佐ジョンロレンス(トムコンティ)、粗暴な軍曹ハラ(ビートたけし)、ハラの上司で所長の陸軍大尉ヨノイ(坂本龍一)、俘虜の陸軍少佐ジャックセリアズ(デヴィッドボウイ)が主な登場人物で、彼らの男としての生き様や強さ、弱さが話が進みにつれて垣間見えてくる。

登場人物が男だけというのも珍しく、4人の関係性がよかった。
出会いが戦争を通してでなければ、彼らは絶対に仲良くやり合えていたんだろうなと思う。

当時の日本軍の常軌を逸している暴挙から、改めて国家のあり方や国際法として世界共通で管理すべきことについて考えさせられる。
これはフィクションなのかノンフィクションなのかはわからないが、こんなことはもう二度と起きるべきではないと心から思うが、それでも世界にはまだたくさんの理不尽があることは悲しい。

倫理観の欠片もない時代、この時代の人々は、全員が戦争や国家の被害者であることがよくわかる。
処刑したくないのにしないといけない。
進んでいる方向が間違っていると思っても、それを伝えることができず、反抗することができない。

間違っている正義が肯定される本当に苦しい時代。
宗教観、価値観、考え方も全然違う日本人と英国人。
(特に国のために死をも恐れない日本人とどうにかして生きたいと乞う英国人。この時点でもう対照的)
それぞれがそれぞれの芯を強く持っており、それを隠すことなく、お互いがぶつけ合う。
初めは、わかり合えていなかったお互いが、ぶつけ合うことで、わかり合えたはずなのに、戦争(という理不尽な抑圧)が邪魔をしていた。
大事なことだけは伝えられてないようなもどかしさも感じた。

「戦場のメリークリスマス」
ロレンスとセリアズに贈られるプレゼントに感動。

こんな悲惨な状況の中でも、人が人を信じたり、自分を犠牲にしてでも、仲間と思った人、わかり合いたい人を助けようとする。

伝説のギタリスト、ジミヘンドリックスの名言に下記があるが、まさにこの映画でも同じことを伝えたかったんじゃないか。
「愛国心を持つなら地球に持て。魂を国家に管理させるな!」
魂を国家に管理されると正しいことの是非を自分で考えられなくなる。
国家が間違っている方向に進んでいたとしても、それに迎合してしまう。
どんな状態でも自分を見失ってはいけない。

人の人間臭い人を思いやれる心が、こんな状況下でも見ることができたのが救い。
最後のハラとロレンスのシーンが何とも言えずグッときた。
人は死ぬのが怖い、そんなことは当たり前だ。

そして相変わらず「メリークリスマス ミスターローレンス」が本当に素敵だった。
映画途中とエンドロール。絶妙すぎる。
岡田拓朗

岡田拓朗