an0nym0us

ディア・ハンターのan0nym0usのネタバレレビュー・内容・結末

ディア・ハンター(1978年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

リップぐらいの大きさの鉛の塊。
本来なら、取るに足らない小さなもの。

でも、そんな小さな塊ひとつで…
人は常軌から逸脱してしまう。

それによって命を奪い、奪われてしまう。

人が生み出した、攻撃性と殺意の象徴。

戦争自体を見せる為の作品ではなく…
『戦場』と『戦争』が人に与える作用。
それをアメリカの片田舎の若者たちをクローズアップする事で描き出していました。

友人たちと過ごす平穏な日常。
そこから殺伐とした戦地への転換。
弛緩からの圧迫によって、観る側へ意識の切り替えを与えるのは見事でした。

平凡な日常を『退屈』だと思った事は?

私たちはいつも真価を見失う。
なんて事ない日々の尊さも…

武器には感情がない。
自ら人を殺そうともしない。
そこに『在る』だけ。

最後に引き金を引くのは『人間』
相手を殺そうとする『意思』

ロシアンルーレットを見ていて…
銃が人に選択肢を与えている気がした。

お前は誰かを殺すのか?

それとも、自分を殺すのか?

その間での葛藤を投げ込んでくる。

それは銃だけに限らず、あらゆる『力』の在り方の一側面としても捉えられる。

何の為に力が在り、それを行使するのか。

使い方ひとつで姿を変える。

銃を殺意の象徴と書いたけれど…
そう思わせてしまうのは…何故なのか。

『鹿狩り』は何を象徴していたんだろう…

古来、狩りは食料を得る為の行為。
獲物の命を奪い、自らの血肉にする。
『狩る』という行為の本質。

その行為だけを『楽しむ』のは…

私たち人間だけ。

強き者は、無駄に殺さない。
それは秩序を保てなくなるから。
野性の中にも、摂理がある。

理性、知能…そこから生まれた道徳。
動物と人を区別するファクター。

嘆かわしいと思える事は、動物よりも優れているはずの人間が、最も愚かだという事。

そんな事も考えさせられた。

戦争が人を狂わせる…なのかな?
本当は何に、翻弄されてるんだろう?
an0nym0us

an0nym0us