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狂った果実のmakiのレビュー・感想・評価

狂った果実(1956年製作の映画)
3.6
美しい女性へ若者が抱く想いは瑞々しい果実のようであり、そこに翻弄されて生み出される怒りが狂気へと移り変わる様相が描かれたエンディングは凄かった。そして、場面転換の構成や空撮とか、文字で記された物語が映画になる面白さに気づく作品。個人的には、船に引っ張られて水上でスキー板みたいなので立ち上がるシーンの連続が勢いを感じて好き。(これなんていうスポーツ?)

「もはや戦後ではない」(1957)といわれる世界を翌年に控えた、朝鮮特需による好景気の時代。
時間をただ潰しているだけのような生き方、有り余ったパワーと、そのパワーの使い方が欲望のままな若者たち。若者像は時代ごとに多少違えど、説明のできない悶々した思いを抱えていることや、大人の目に映る若者への「今時の若者は何考えてるかわからない」的感覚は変わらないなと感じる。

石原裕次郎という昭和の大スターは、名前や姿こそもちろん知っていても(誕生日が一緒w)、作品をまともに見たこともなかったので、初・裕次郎。当時の男前ってこんな感じ?なのかよくわからないけど、歌、そして口笛がめちゃくちゃ上手い。

逗子・葉山を中心に、神奈川と言う設定もあって、最近見た『月曜日のユカ』(1964)といろいろシンクロするなと思いきや、同じ中平康監督。若者と海の眩しさと危うさは『太陽がいっぱい』(1960)を思い出し、『勝手にしやがれ』 (1959)『突然炎のごとく』(1961)、そして『月曜日のユカ』(1964)のような劇的幕切れ(ちなみに『ジョーズ』 (1975)も頭によぎった笑)、まだまだ映画の鑑賞作品が少ない私でも、様々な軸で作品と作品の関係を感じられるような、勝手にこじつけれそうなくらい、荒さはあるけどいろいろ詰まった作品でした。
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