Rick

魔女の宅急便のRickのレビュー・感想・評価

魔女の宅急便(1989年製作の映画)
5.0
 魔女は血で飛ぶという。絵描きには絵描きの血が、パン屋にはパン屋の血があると。どうやら単なる血筋や血脈のことではなさそうだ。これまで、それとして生きてきた経験や誇り、また覚悟こそが、その人をその人たらしめる。生きていれば、それはもう上手くいくことの方が少ない。失敗続きで、向いていないんじゃないか、いっそのこと、もうやめてしまおうかなんて思い出したらキリがない。小さなミスから取り返しのつかない大きなミスまで。でもそれらを補って余り有るほどの、細やかで貴い物だって転がり込んでくることもある。振り回されて、悩んで、自己嫌悪に陥って、落ち込んだりもしたけど、私は元気だと思えるような何かがあるから、それを大切に抱えたまま生きていける。
 まるで初めてのような感覚で見返してみると、開始数分で目頭があつくなる。少し早まった旅立ちの日、子の成長を喜ばしくも心配しながら温かく送り出そうとする親、心配事よりもこれから待ち受けるワクワクの方に気が行くキキ。最低限の台詞だけで視覚的に説明し、それでいながらエモーショナルに旅立ちへと移行する語り口があまりにも上手い。そうキキはまだ13歳になったばかり。しっかりとしていて大人顔負けの働きもするけれども、初めての出来事に打ちのめされる日々。見ていて本当に辛くなるような部分もあるからこそ、最後には更なる成長に感動し、この子ならきっと大丈夫と安堵する。それと同時に、自分もきっと大丈夫と言い聞かせる。
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