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泥棒成金のnoteのレビュー・感想・評価

泥棒成金(1954年製作の映画)
3.5
屋根を飛び回る姿から「猫」と呼ばれた宝石泥棒のジョン・ロビーは、今は足を洗い、仮釈放の身で自由気ままに暮らしていた。しかし、ある時、リゾート地の高級ホテルから次々に宝石が盗まれる事件が発生する。その手口がかつてのロビーのそれと同じことから、警察はロビーを捕らえようとするが…。

南仏を舞台に、汚名を着せられた元宝石泥棒が、自分の模倣犯を捕らえるようと奮闘する姿を軽快なタッチで描いたサスペンスー、というよりロマンチックコメディ。

サスペンスの神様ヒッチコック監督の作品だが、怖くもないしハラハラもしない。
「たまには洒落た映画を撮ってみよう」くらいの肩の力の抜きよう。
見る方も力を抜いて見るべき。

身に覚えのないロビーは警察の手を逃れ、独自に調査を開始。
自分の偽物が狙いそうな高価な宝石をもった金持ちの旅行客を探し、アメリカ人女性のジェシーとその娘で若く美しいフランセスの2人に近づく。

ヒッチコック監督はグレース・ケリーを撮りたかったに違いない。
美貌とゴージャスな衣装の美しさも良いのだが、お姫様然とした彼女の演技を開眼させたかったに違いない。

本作のフランセスはお金持ちでプライドが高く、勝気な女性。
自分が美しいと認識しており、そこにいるだけで周囲の人々と視線を集めるのを当然と思っていて、まったく気にも留めない…と最初はとても嫌味な女性。
それまでのヒッチコック作品とは全く違う役所。

フランセスは出会ったロビーに興味を持ち、やがて2人は恋に落ちる。
ロビーを愛するようになって、可愛らしい女性に変わってゆく…ツンデレである。

恋が成就する歓喜を表した花火を背景にした官能的なキスシーンは映画史上ベストワンかもしれない。

模倣犯はロビーも良く知るかつての仲間の娘だった。ロビーは漸く穏やかな生活に戻る。
2人の恋の鞘当がメインで、泥棒の話は「さもありなん」と取ってつけたかのような終わり方だ。

お話はずさんだが、南仏の美しい風景とグレース・ケリーの美貌に見惚れるだけで良い。
時折、洒落たセリフとコメディのやりとりにクスッと笑えば良い。
ヒッチコック作品で最も微笑ましい映画だ。

最も残念なのは邦題。
元泥棒の男と石油成金の娘の話しだから「泥棒成金」とは…
もっとロマンチックな題名なら、良かったのに。
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