嫁にいく娘を思い、寂しい気持ちになる父を描いた作品。
小津作品は父と娘の物語が他にもあって、どれがどれだっけ?と、ごっちゃになる…。
妻に先立たれた男が、娘の結婚について考える。父の身の回りの世話をしている娘は縁談話があっても、自分が嫁にいくと父が心配なので悩む。
クラス会で再会した恩師もまた妻に先立たれ、嫁にいかない娘がいた。恩師を自分と重ね、これじゃいかん、と思い直す。
レコードで軍艦マーチを流し敬礼する時代、この頃は意中の人がいても縁談話を受けて結婚する時代だったんだな。
父を演じた笠智衆は、小津作品常連の役者。台詞は感情の起伏があまりなく、一本調子な感じ。海に例えると荒波ではなく、穏やかで静かな夕凪といった感じ。
カメラ目線で言う台詞はあまり上手とは思わないが、この人は背中で語る役者さんだな、と思う。娘が嫁にいった時の背中は哀愁が漂っていた。
米粒ひとつも残しちゃいけない、そんな精神のように、役者の表情をひとつも逃さず、ビシッとカメラに被写体を丁寧に捉えている。