鑑賞記録。
人生の不毛。
ミケランジェロ・アントニオーニ。
この監督特有の物悲しく切ない映像詩に、テーマ性とサスペンス性を載せた名作である。
主演はジャック・ニコルソン。
本作の内容に就いても、先達の詳細且つ克明(詳細過ぎてネタバレの様に感じるが…)なレビューが有る為、割愛する。
ただ、私には問題の「七分間の長回し」に続く夕暮れのラストショットが、この監督の精神性を表している様に感じられる。
其れは詰まり、単に人生が不毛だと嘆くだけでは無く、「荒涼とした人生の砂漠故にこそ、灯りの点る美しい瞬間が有る」と云う意である。
ロックでも無く、ロバートソンでも無かった彼の入れ替わり後の数日は、それ故にこそ二人の女性の回答を導き出したと捉えられよう。
ラストショットに「不毛」を見るか、「灯火」と捉えるか。
其れに依って全く異なる内容を指し示す、懐の深い作品である。