けんたろう

赤ひげのけんたろうのレビュー・感想・評価

赤ひげ(1965年製作の映画)
5.0
冬に観たいおはなし。


長い!
…いや時間だけじゃない。内容も二夜連続テレビドラマのそれだ。とにかく充実の三時間強。まるで美味しい物をたらふく食ったあとの満足感がある。

ぶっきらぼうがゆえの可笑しさや格好良さが堪らなく愛おしい赤ひげ先生(三船敏郎)。
その無愛想な顔面から滲み出てくる温かさは、なによりも胸に沁みる。あの保本(加山雄三)が惚れちまうのも無理はない。俺も惚れた。

人情みのある物語に添えられた温和なテーマ曲。
これがまた好すぎてしようがない。きっと冬にこそ必要とされる映画、そうして音楽なんだろう。晩夏初秋に観て聴いた俺ァ、心があったまりすぎてもう駄目になっちまった。

個人主義なんてクソ喰らえと言わんばかりの、人と人との温かき物語。飽くまでも人に優しく。あゝ、無私こそ至上の格好良さなり。
巨匠黒澤明の描いた、感涙必至この上ない人情ドラマ。やはり焦がれずにはいられなかった。


因みに、劇中で描かれた、井戸が死者の云々にはなんだか民俗学の香りがした。好物。