Azuという名のブシェミ夫人

プリンス&プリンセスのAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

プリンス&プリンセス(1999年製作の映画)
4.3
フランス映画フェスのはずが、途中からミッシェル・オスロ監督フェスになった。
魅力的なんだもの。

観る順番が逆になってしまったのだけれど、『夜のとばりの物語』の設定はこの作品が始まりだったのですね。
深夜の劇場で、若い男女二人とリーダーの様な中年男性が各々アイデアを出しあって物語を創作する。
物語が決まったら衣装を製造する機械で変身して、素敵な劇が幕開けするのです。

後の作品に比べると、華やかさに欠け地味な印象を受けるかもしれませんが、その素朴な彩色がノスタルジーを生み出していて今作もとても素晴らしい。
静謐な画面の中に躍動するような美しさを封じ込める。
ほんとに制作現場を見学してみたくなってしまいます。

そして物語がどれも好き。
『プリセンスとダイアモンド』『少年といちじく』『魔女』『泥棒と老婆』『冷酷なプリンセス』『プリンス&プリンセス』の6編からなるオムニバス。
世界に数多あるおとぎ話と同様に、この物語たちは人生の教訓のようなものを時に愉快に、時に厳しく私達に語りかけます。
ほんの短い物語ではありますが、どれも印象的なのはそういった側面を持っているからでしょうか。
私のお気に入りは『魔女』!
1話目の『プリンセス&ダイアモンド』の終盤のシーンがシンプルながら輝かしくてどういう風に撮ってるんだろうと思っていたら、オスロ監督がメイキングで説明してくれていて納得!
全編に言える事ですが、お部屋は暗くして観るのがオススメ。

『泥棒と老婆』は他の作品に比べて物語が異色なのですが、なんと舞台は日本!
オスロ監督が敬愛する葛飾北斎の絵をモチーフとした作品で、日本人として嬉しくなります♡
北斎の世界を踏襲しながらも、しっかりオスロ監督のテイストを加えた素敵な画になっていました。

こういう美しい作品を創りだせるミッシェル・オスロ監督のような人から世界はどんな風に見えているんだろうか。
見ている風景や物が同じでも、感じ方が違うのかもしれないと考えたりする。
時には悲しさに包まれる日もあるだろうけれど、どんな世になろうとも私達が生きる美しき世界を見逃さない人間でありたい。