喜連川風連

白い巨塔の喜連川風連のレビュー・感想・評価

白い巨塔(1966年製作の映画)
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傲慢と過信が己の失墜を招く、古今東西に伝わる神話のような白い巨塔。

唐沢版のファンだったが、田宮版を初視聴。さすが橋本忍脚本、2時間半に美しくまとめられている。ナレーションと字幕のタイミングが素晴らしく手際がいい。

田宮二郎から溢れる野心的なエネルギーも魅力的。田宮演じる財前は家が貧しく、母親に楽をさせるために、上へ上へと出世欲をむき出しにしていく。この様は当時の日本人のイメージにも重なる。

wikiで田宮二郎を調べてみると、田宮二郎そのものが財前五郎のような人生を辿っていた。映画のポスターで自身の扱いが小さかったことから上司と衝突し、映画界を飛び出す。その後、テレビスターとなり栄光を手に入れるものの、ドラマ版白い巨塔を演じた後、何を演じればいいかわからなくなり自殺する。

まさに役に食われた役者だった。そんな命を賭けた作品が面白くないわけなく、節々に田宮のエネルギーが溢れる。

唐沢版との最大の違いは、生々しい臓器の描写の多さ。解剖のシーンで臓器がそのまま出てくる。まるで牛のレバーのように、画面にはヌメっとした臓器が映る。

後に引き継がれる大名行列のような総回診はこの映画から。

歴史に残る名作です。
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