ラモン・サラサール監督・脚本によって製作された2002年のスペイン映画
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女性の心を表すものに靴がある。明るい気持ちの時は自ずと明るくなり、暗い気持ちの時はくすんで見える。年齢も境遇もバラバラな5人の女性が、それぞれの心を表す靴を履きながら織り成す群像劇だ。自分に合った靴がどこかにある。シンデレラを捜す王子のような気持ちは、多くの女性の共感を得るだろう。
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盗んだ靴をはく女、扁平足の女、スリッパをはく女、スニーカーをはく女、小さな靴をはく女という5人。とにかくみんな悩んでいる。ちょっと暗すぎるというぐらい悩んでいる。これだけいれば共感できる登場人物もいるだろう。そんな女性たちが、悩みながらも自分の居場所を探し、物語は交錯していく。
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ただ、少し解りづらい。新鋭の監督のやる気が空回りしている気もする。群像劇というのはオーケストラのようなもので、指揮者がまずいと不協和音を奏でる。コンセプトは面白いんだけど、それを指揮する監督の力不足かな。ひとつひとつのエピソードがうまく溶け合っていない。最後にきれいにまとめようとして、なんだかフワッとしてしまった。
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スペインを代表する女優たちの共演は刺激的だった。「オール・アバウト・マイ・マザー」で性転換した売春婦を演じたアントニア・サン・フアン。迫真過ぎて国民にまで男性だと勘違いされてしまった女優。この映画では母と女という二面性を演じていた。レイレ役のナイワ・ニムリはすごくきれいだし、アンヘラ・モリーナやロラ・ドゥエニャスといった日本での知名度は低いけど、スペインで人気のある女優ばかりで楽しい。
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新鋭の監督が頑張りすぎてしまった感じはするものの、女性と靴を結びつけた物語というコンセプトは、斬新だし的を射ている。もうちょっと靴を強調してもよかったかなというのと、少し話が暗すぎるというのが個人的な見解かな。高級ブランドの靴なんかも登場するし、靴が好きな悩める女性にはハマるかもしれない。