ひろ

オッペンハイマーのひろのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.2

「原爆の父」ロバート・オッペンハイマーの生涯を描いた2023年公開のアメリカ映画

監督・脚本・製作はクリストファー・ノーラン
アカデミー賞では、作品・監督・主演男優・助演男優を含む7部門を受賞

サブスク全盛期のこの時代に、伝記映画として歴代最高の興行収入を記録したっていうのはすごい。3時間の小難しい内容を大ヒット映画にして、悲願のオスカーまで受賞したノーラン監督は素晴らしい。昔から大好きな監督で、どの作品も面白かったけど、これは映画賞を総なめにしたのも納得の作品

正直、原爆の父オッペンハイマーの伝記映画と聞いて、少し気が引けるところもあった。やはり唯一の被爆国の日本人だけは、この映画を見る視点が異なるのは仕方ない。かつてのアメリカ映画は、アメリカ最高!アメリカ正義!っていうのが当たり前だったから、そんな内容だったら好きな監督を嫌いになっちゃうよと不安だった

結果、これは原子爆弾の是非、戦争について考えさせる映画。多くの人が見るべき内容で、こういった作品をアメリカが作り、しかも支持されたってことが時代の変化を感じる。あくまでオッペンハイマーという人物の視点で描かれているので、原爆の全てが描かれてはいない。実際に投下された日本の惨状を描くべきだったという意見も多かったみたいだが、そこまでするとオッペンハイマーの人物描写が弱くなっちゃうから、作品としてはこれでよかったと思う

オッペンハイマー役でアカデミー賞主演男優賞を受賞した、ノーラン作品常連のキリアン・マーフィー。元々、演技派で知られる俳優だけど、物理学者として、人間として揺れ動くオッペンハイマーの演技は文句なしの名演。助演男優賞を受賞したロバート・ダウニー・Jrなんか、受賞したの知ってたのに、途中まで誰だか分からなかったぐらい憎たらしい演技で素晴らしかった

エミリー・ブラントやマット・デイモンといった脇を固める豪華俳優達もよくて、重厚な長編映画を飽きさせることなく最後まで楽しませてくれている

原子爆弾が無かったらどうなっていたか
日本は軍事国家のままだったのか
滅びていたのか、平和になっていたのか
大量破壊兵器が悪なのは間違いないが
今も世界中で戦争が起きていて
日本はお金をばらまくだけの国となっている
唯一の被爆国としてどうあるべきなのか

「オッペンハイマー」は
そんなことを考えるきっかけになるかもしれない
ひろ

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