ひろ

コーダ あいのうたのひろのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.5
コーヒーみたいに苦い現実を、少しだけ甘くしてくれる角砂糖みたいな青春。家族と夢を天秤に乗せて、少女は成長していく。

第94回アカデミー賞で作品賞、脚色賞、助演男優賞を受賞した2021年の映画

聴覚障害者の両親と兄を持つ10代の少女の物語。歌うことが好きな少女。家業の漁師の手伝いをしながら学校に通う高校生。音のない世界で家業を優先する家族と歌うことに生きがいを感じる少女。夢か現実か。なかなかハードなプロット。

フランス映画「エール!」をリメイクした作品。酪農家から漁師といろいろプロットも変えてて、脚色賞を受賞しただけの脚本力があると思う。Appleが配給権を買ったけど、いよいよ動画配信の映画が映画界の中心になってきた印象。

ボロ泣きしました!
久しぶりに堪えられなかった。
家族を愛してるけど夢を追いたい10代。でも家族は耳の聞こえる娘の助けを必要としている。そんな状況で恋もしちゃったり、少女の揺れ動く心。とんがってる兄ちゃんがよかった。歌の発表会の演出もよかったけど、ろう者である父親と歌で語り合うシーンは最高の名シーン。

家族の3人は実際にろう者の俳優。母親役のマーリー・マトリンはオスカー受賞経験もある名優。この作品で助演男優賞を受賞した父親役のトロイ・コッツァーがよかった。あまりデリカシーはないけど家族を愛する父親。手話は分からないけど、彼の手話から感情が伝わってきた。主人公ルビーを演じたエミリア・ジョーンズは素朴で歌もうまいし、好感が持てる演技だった。

この作品の成功に欠かせなかったのは、監督と脚本を務めたシアン・ヘダーだろう。彼女は手話を勉強して、俳優への指示もちゃんと手話でしてたっていうし、お偉いさん達が健聴者の俳優をキャスティングしようとする中、ろう者の俳優のキャスティングを譲らなかった。健聴者は演技はうまくても手話がひどいことが多いらしく、普段から手話を使う俳優だからこそ、リアリティのある作品に仕上がったのは間違いない。監督賞も受賞してもよかったと思う。オスカーのスピーチでろう者の役はろう者の俳優に!と言っていたこの監督を讃えたい。
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