まりぃくりすてぃ

H storyのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

H story(2001年製作の映画)
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ヴァン・ダイク・パークスに「カラスは何度も泣きわめき、トウモロコシ畑の秘密をさらす」の意味を説明しろと迫ったリードヴォーカルのマイク・ラヴに、ヴァン・ダイクが「崇高な詩とはそういうものだ。君は詩の解釈を求めているのかもしれないが、意味を説明することはできない」と答えた。マイクは「書いた本人が意味を説明できないような歌詞を俺たちに歌わせようというのか!」と激怒。そのレコーディング・セッションを最後にヴァン・ダイクはザ・ビーチボーイズから去った。
その事件さえなければ、『スマイル』はきちんと完成し、ヴァン・ダイクを連れてきた繊細すぎる孤高な天才作曲家であるリーダーのブライアン・ウィルソンは“幾度目かにして決定的な、発狂”を免れ、ラバーソウル対ペットサウンズ対サージェントペパーの壮絶戦はスマイルの勝利で幕を閉じたにちがいなく(←断片を聴き比べただけで誰にもそれはわかる)、ザ・ビートルズは当然(早期解散ふくむ)まったく別の1967年以降を歩んだかもしれず、その意味、マイクがイライラのあまり「ちんぷんかんぷんだ!」と歌唱を最終拒否したのはポピュラー音楽史を変えた大事件であり、ビートルズが世界の文化全体に今なお与えつづけている影響の多大さを思うと、20世紀そのものを根底から変えたとさえいえる。

・・・・・・というような歴史絵巻に久しぶりに想いを馳せながら、このダラダラ映画を観た。「こんな台本じゃ、やってられない」「間違った」「みんな間違ってる」などと女優が駄々をこねようがこねまいが世界史はちょっとも変わらない。元ネタの過去映画自体、今では(通の人以外には)ほとんど誰にも知られていなくて、核兵器も戦争もなくなりそうにない。

そんなことよりも、また赤い服が出てきた。この監督の作品には必ず鮮明な赤が出てくる。広島カープの色だからだ。もみじ饅頭クリームチーズ味がおいしかったりする広島は、私の好きな街の一つだ。好きすぎない。