めしいらず

七人の侍のめしいらずのレビュー・感想・評価

七人の侍(1954年製作の映画)
4.7
恥ずかしながら今回が初鑑賞。これまで何度も観る機会はあったのに変に気取ってスルーしてきた己が難儀なる性分を恥じる。この三時間半の大長尺を全く感じさせない圧倒的な面白さだった(間を置かず二度目も鑑賞)。野武士に繰り返し掠奪されて貧窮してきた農民たちが、村を守るために立ち上がり七人の浪人を雇い入れていく序盤。年長で切れ者の浪人勘兵衛が中心となり、野武士襲来に備えて村を要塞化し、村人たちを兵卒として教育していく中盤。入念に練った戦略通りに野武士たちを迎え討ち四日間に亘る戦闘の末に掃討せしめる終盤の大まかに3つのパートからなる。これぞ大活劇映画の醍醐味と思わせるど迫力の終盤は、そこに至るまでに積み上げた的確かつ魅力的な人物描写、地図を使って村の位置関係を見せ戦略を分かりやすく伝えた演出の妙、そして生活描写や浪人と村人の和やかになっていく関係性、若者の恋愛などの人間ドラマの部分の深みがあってこそだろう。観客は映画内へと自然に導かれ夢中になっていたことにふと気付かされる。本当にどのパートも素晴らしくて間然とするところがない。ここには黒澤一流の美学、ダイナミズムとヒューマニズムの完璧な調和がある。長らく日本映画のオールタイムベストであるのも宜なるかな。志村喬の勘兵衛や三船敏郎の菊千代も極めて魅力的なのだけれど、個人的には宮口精二のクールな剣客久蔵のカッコよさに惹かれる。少しだけ気になるのは村人と浪人の側ばかりで野武士の側の視点が描かれていないこと。とは言え清廉潔白とは言いかねる農民たちの嫌らしい側面もちゃんと描かれていてバランスはされていたとも思う。
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