まりも

早春のまりものネタバレレビュー・内容・結末

早春(1956年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

これは!
セリフを全部ノートに書き起こしたい衝動にかられる。会話がさっぱりしていておかしみもあっていいなー。みんな率直でシンプル。きわどい話もあっけらかんと相手の話をへんに解釈したりすることなく、その場で話が着地する。

高度経済成長期のサラリーマン役に池部良。とてつもなく端正なマスク。この時代の男性はなぜか素敵に見える。こざっぱりした髪型に開襟シャツ。空気感に余裕のあるスーツ。今のシュッとした細身スーツは股間がキツそうで自分はひそかに心配してます。(余計な心配)
池部良は毎日満員電車に揺られ会社に通いますが、実は鉄砲の玉をかいくぐって生きて帰ってきた戦争体験者なわけです。こと女に対しては、打っても響かない何を考えているかよくわからない男なのに抗えない魅力。たぶん顔だけじゃないの。空白を埋めてあげたくなるような。岸惠子がガンガンモーションかけるのもわかる気がします。笑
まあ不倫の話なのですが、抱いた途端にめんどくさくなってる男と抱かれた途端にめんどくさくなっちゃう女。くーっ!安二郎にくいね!

そして妻役に淡島千景さん。襟のつまったシャツの着こなしがキャサリン・ヘプバーンみたい。浴衣姿もきりりとしてお美しい。ただの焼きもちではなくて、亡くした大切なものを忘れている夫に怒っているんですよね。もー安二郎ったら!

1950年代の作品ですが、今の世の中の話みたい。なぜか関係ない奴らが不倫に謝罪を求めて集団での吊し上げがあったりして。嬉しそうにえらそうに説教しながらもポロッとうらやましさを口に出したりする。

妻が妊娠して戸惑う高橋貞二もよかったなあ。
「おっかしいなあ。そんなはずねえんだけどなあ。。」って、ずーっとぶつぶつ言ってる。笑
そしてベストアクターは浦辺粂子!淡島千景の母役でどこも似てない母娘ですが、ほんとのお母さんみたい。話すときの目線や話ながらする台所仕事の動きなど職人芸を見ているようでした。
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