まりぃくりすてぃ

夜の鼓のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

夜の鼓(1958年製作の映画)
3.4
(ホラー色強い京マチ子さんなんかを跳び越えて)眉なし厚塗りの有馬稲子さんの可憐な妖艶さがトゥインクル!
森雅之さん、無難。
三國連太郎さんはアウト気味。。。

煮物の調和がまずあって、それは和食で、(おでん的には)お大根と玉子とコンニャクと牛スジを兼ねたみたいな八面六臂の美人妻・有馬さんをはじめ、だいたい皆さん調和してて、浮気相手・森さんはさしずめインゲンかな。女中役の奈良岡朋子さんが意外に脇役中で一番いい素材。
そんな中、濃すぎる顔と(喉にペダルでもあるみたいな)フガフガ声の夫・三國さんは、一人勝手にバジル入りポークソーセージみたいなバタ臭さを鍋中にムダに加えちゃってる。役を演じる前にまず三國を演じちゃう──みたいなこういう硬直オーラは、現代のキムタクなんかと同じ。キムタクは傲慢さと無芸さでそうするんだろうが、三國さんの場合はどうしても顔立ちが日本人離れしすぎてるゆえに、周囲から浮いたような役柄の時こそマッチする(最好例は『天草四郎時貞』中の謎の絵師)けど、あくまでも“咲きっぷり凄い、成りきり演技の有馬さん”の引き立て役であるべきこの純和風世界での彼は役柄以上にエゴイスティックに見えた。彼だからこそコレ、といえる褒め点がない。ただの斬り係。
あと、悲劇の元凶をつくった言い寄る床右衛門役の金子信雄さんの演技が、“いかにも小悪党です”の安っぽいTVサスペンス的。俳優として諸悪の根源になっちゃってる。
脚本は、逆転一切起こらずバッドエンドへ快速直行。有馬稲子ファン以外にとってはほとんど価値のない、素敵作。