ろ

幸福の設計のろのレビュー・感想・評価

幸福の設計(1946年製作の映画)
5.0

淀川さんの本で読んだのかどこで見たのか、ずっと憧れ続けていた一本。
こんなに早く、夢が叶ってしまいました!いいのか!いいのよ!

印刷工のアントワーヌとデパートで働くアントワネット。
二人は暖房も洗面台もない安アパートで慎ましやかに暮らしている。
そんなある日、アントワネットが購入した宝くじが当たった。
80万フランの大金に有頂天の二人。
「このお金で何をしよう?」
暖炉の鏡に、アントワネットが口紅でするすると書いていく。
まずはアパートの引っ越し、それからサイドカー付きのバイク。
しかし幸せも束の間、くじを入れていた財布をアントワーヌが落としてしまう・・・。

くじの当落を確認しようと広げた新聞にぽっかりと足型が4つ。
そうだったそうだった、新聞を切り抜いて中敷きにしてたんだった。
靴の中から紙切れを引っ張り出してみる、7桁の数字のちょうど真ん中が破れて読めない。
でも他の数字はぴったり合ってるんだよ、アントワネット。と言いたげに、アイロンがけをする彼女を振り返るアントワーヌが最高にキュート。(彼に代わって彼女にクローズアップするカメラも、音楽も最高!)

「もしも僕と出会わなかったら、違う人と一緒になっていたかい?」なんて、弱気な言葉をアントワーヌに言わせる男こと、八百屋のおやじは何かにつけて鉢植えやマロングラッセ(プレゼント)を届けにやって来る。
そして、アントワーヌの留守中、ついに事件が起こる!
怒ったアントワーヌはおやじと、しっちゃかめっちゃか大乱闘。
ガシャガシャと音をたてながら鍋が落ち、窓は割れ、テーブルは真っ二つ!
「どうしよう、アントワーヌが殺されるわ!」
アントワネットは同じフロアのドアを叩いて回り、隣のボクサーも警備員も駆け付ける。
「右だ!左だ!」「アントワーヌやっちまえ!」
みんなが声援を送る中、乱闘で外れてしまったガスのホースをそっと誰かが繋いでくれる。

二人のキスがオーバーラップする。
幸福の風に笑みがこぼれる、爽やかなラストシーン。




( ..)φ

ベッケル監督の描くアパートが好きだ、夫婦が好きだ。
「お釣りはないよ」と言ってばかりの切符売り場のお姉さんも、一度は鉢植えをもらってくれたけど旦那さんに浮気を疑われてやっぱり返しに来た奥さんも、好きでたまらない。
主人公だけじゃなく、周りの生活がワイドに見えてくる。音も光も匂いも、触れるぐらい近かった。

今年の劇場鑑賞一本目に、これが観られるとは思っていなかったよ。本当に嬉しかった。
ゴーモン社の特集上映、本当にどうもありがとう。
ろ