しゅん

万華鏡のしゅんのレビュー・感想・評価

万華鏡(1999年製作の映画)
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写真家有元伸也が若き尾野真千子と三船美佳を撮る。その様子を河瀬直美が撮るという形式だが、全ては河瀬の掌の上。東京駅での有元との会話で「いじめるよ」と脅していくが、本当にいじめてるように見える。女優たちよりも有元を映す時間が長く、河瀬はキャメラの外から何度も質問を投げかけ、しまいには「何のために写真撮ってるん?絶望したよ」と、映像を見てる私たちにとっては理由のわからない罵詈雑言がきこえる。この不可解さを探るために映像に目を凝らすが、口元を覆う有元の顔に答えはない。渋谷の街角で有元がキャメラに向かって三回シャッターを切ると映像はホワイトアウトしてエンドロール。突き放された謎だけが残る。
負荷をかけることと謎の組み合わせに対して僕は嫌悪感があるので見ていて嫌な気持ちにさせられる。河瀬の顔が一切出てこないところにも暴力的な感覚を覚えるが、おそらくそれは河瀬の主観に基づく映像だからだろう。極めて私的なドキュメンタリーであり、それ故に理解を拒む謎があたりを覆う。この「私」が映像を通して他の私に伝播されることをどのように考えればよいか。三船美佳の母校で三船がいじめの経験について語るときに、ポールに紐で繋がれたボールが回転しているところを映すシーンがある。ポツンとありながら、弧を描いて移動する球体と、孤独の体験を語る声との重なりが、一番印象に残っている。

しかし、尾野真千子と三船美佳の初対面の空気の噛み合わなさがすごい。あと尾野真千子はひたすらにかわいい。
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