しゅん

PERFECT DAYSのしゅんのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
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すっかり書くの忘れてた!

こんな広告的な作品、というか実際に渋谷区のトイレ広告の意図が働いてる作品なのに、いい映画になっていることに驚く。映される風物もセリフも広告そのもの。石川さゆりが働く小さなバーのシークエンスなんか、その歌唱力にもかかわらず恥ずかしてみていられなくなる。叔父と姪の『ねじまき鳥クロニクル』めいた会話も、最後の陰踏みも自分には恥ずかしい。だけど面白い。なんで面白いかはよくわからないがずっと楽しく観ていた。役所広司演じる平山が部屋を出て車に乗るまでの繋ぎ、植物にあてるライトとスカイツリーのライトが紫で同調する瞬間、下北のカセットテープ屋の狭い店内でのドタバタを俯瞰で撮るポジショニング。あらゆる点でハッとさせられた。

繰り返す一日のルーティーンに変化が生じる。それは撮影と編集にも同様なことが言えて、家をでて自販機で缶コーヒーを買ういつもの場面が、一度2階の室内に置かれたカメラから斜め下の視点で撮られる。その時、缶コーヒーが落ちる音に、異常なノイズがかかっている。インダストリアル•ミュージックでしか聴いたことのない歪みが、つつがない日々の動きに紛れ込む。こうした演出が面白くて仕方ない。賛否両論が本当に真っ二つに分かれてる映画ってこれだと思うのだけど、私はあの缶コーヒーの演出で全てがオッケーになってしまった。万が一映画を作るときが自分にやってきたら(まずあり得ないが)、この映画を見返すと思う。
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