てつこてつ

愛のメモリーのてつこてつのレビュー・感想・評価

愛のメモリー(1976年製作の映画)
4.0
ずっと鑑賞したかったデ・パルマ監督の初期の代表作。ゲオ宅配レンタルで半年間ずっとチェックしていたんだけど、置いてある店舗が少ないのか常に貸し出し中で6ヶ月越しでやっとレンタル。DVDならではの特別版であったことも、特典特典映像の内容の濃さに大満足で、安易にサブスクで流れていなくて良かったとしみじみ実感。

本作の謳い文句には、ヒッチコックの「めまい」の影響を受けた作品とあるが、特典映像のデ・パルマ監督のインタビューによると、共同作業で脚本を手掛けた、こちらも名監督のポール・シュレイダーと共に「めまい」を鑑賞してすぐに本作のアイディアが浮かんだというから、影響どころか「めまい」を下敷きにした作品であることが明確。

ストーリーは流れるように分かりやすく、当時の映画製作費用としては格安の100万ドルしかなかったにも関わらず、美術の街、デ・パルマ監督が学生時代に訪れ強い想いがあったイタリアのフィレンツェでロケを敢行するなど、やはり映像に拘る監督ならではの持ち味も出ている。

「めまい」同様に全体に甘めのソフトフォーカスな撮影手法、手持ちカメラでパンさせることで歳月の流れを表現する演出、クライマックスのスローモーションとか、まさにデ・パルマならでは。ストーリーを語るように全編通して流れる非常に効果的でムーディーな音楽の担当は、なんと、「めまい」も担当したバーナード・ハーマン。

出演者陣も素晴らしく、監督やプロデューサーが、ヒッチコック作品などで主演を張っていたジェームズ・スチュワートやケーリー・グラントのような1950年代の典型的な二枚目俳優をイメージしてキャスティングしたという濃い目のイケメン顔のクリフ・ロバートソン、本作後にデ・パルマ監督作品でも個性的なキャラクターで多々出演する事になるジョン・リスゴーはもちろん、何と言っても、ヒロイン役に抜擢された個人的にも好きなジュヌヴィエーヴ・ビジョルドのこの若さにしての演技力の凄さが光る。

彼女の役どころは、「めまい」で言うキム・ノヴァクに当てはまるのだが、本作では更に捻りを効かせた作品なので、一人二役と言っても、本作では髪の色を変えるだけくらいでは不可能な圧倒的な演技力が無ければ成立せず、視聴者も納得できない茶番劇に終わってしまった感があるので、彼女に白羽の矢を立てたデ・パルマ監督の目利きは素晴らしい。特典映像では、ジュヌヴィエーヴ本人も自身のキャリアの代表作だと胸を張って言えると答えてくれていることも何だか嬉しい。

デ・パルマファンの方なら、是非とも、この映像特典付きの特別版にて是非ご鑑賞いただくことを強くお勧めする。カットされたシーンや監督の意図など色々と面白い逸話が語られていて非常に興味深い。

ただ、この邦題・・原題のOBSESSIONから「妄想」のままで良かったかも。
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