みほみほ

シャインのみほみほのレビュー・感想・評価

シャイン(1996年製作の映画)
4.1
🌟🎹2023年71本目🎹🌟(字幕)

時代が変わり ワイヤレスイヤホンで通話しながら歩いてる人を見かけることが増えた昨今、見極めが難しくあまりその存在が目立つことは無くなったけど、それでも大きめの声量で独り言を言いながら歩いている人を見ると、恐怖心を抱いたりする。

でもそういう人の背景にこんな人生があったら…と想像したら瞬間に見えてくるものが変わってきて、何がその状態に追い込んだのかや 言葉の一つ一つがおかしく思えても、意外と人生が反映されていて実は心の叫びが凝縮されていたりするのかもと、背景を思いやれなかった自分の無知に気付かされる。

あの父を跳ね除けることの出来る才能と、その代償… ああいった親子のやりとりはとんでもなく苦しくやるせない。

バイオリンを折られた父が自分の悔しさ無念さに折り合いを付けられる日が来るまで、きっと息子は苦しみ続けることが分かるだけに地獄。

だが 父の人生を考えてしまうとまた苦しい。自分が諦めたことを子に託し、子が実力を発揮し世界的に成功しつつあるというのに、いざ輝かしい世界に羽ばたこうとすると全力で阻止しようとする愚行。

いつまでも自分の手の内で飼い慣らしていたい、それ以上の成功は本来その世界に居るはずだった自分のプライドが許さないといった感覚なのか…息子は籠の中の鳥じゃないんだぞ。

理解出来る部分も少しあるけど、英才教育しておいて道を閉じそうとするのは本当に意味分からなかった。きっと全てが憎ましく、子にピアノを仕込んだのも自己を満たす為だったのだろう。

悲しい親子関係だ。自分の希望ではなく父を喜ばせる為の行動になってるのが切ない。

自分の悔しさと折り合いをつけて、ピアノの先生として活躍するとか他の道に力を注いで欲しかったけど、あの時代に大学を出ていなかったらピアノの天才を育てようと見向きもされない世界なのかもしれない。

父が心から応援してくれていたら、彼の精神面はどうなっていたのだろう。最後の最後までボロボロな家具やメガネを直すお金もなく、ピアノにすがり続ける父の姿が哀しかった。

ビターな面を強く持ちながらも、デヴィッドの興味深い人生に魅了された。星占いがひょんなことから人生を変えるきっかけになるのも可笑しくて好きだし、バーの店員さん達もなんだかんだ温かくて良かった。

デヴィッドが入店した時に小馬鹿にするように笑っていた彼が、映画の中ではちょっと嫌なやつに映るんだけど、現実として当てはめてみたらあそこまで露骨でなくともあの反応する人が多数だと思うし、私自身も訳分からず笑っちゃいそうなので 色んな受け止め方が見れて面白かった。

なんだ変な奴来たな…っていう冷たい目線から才能で黙らせその場を歓喜させるのって最高に心地良いしかっこいい。

あの才能を開花させたのは父だが、その芽を摘もうとしたのも父。だけど一度花開いた才能は輝き過ぎて、どんなところに行っても潰せるはずないと言われた気がしました。

名作の口々に言われるのも納得の作品でしたが、思ったよりもビターで現実を叩きつけられる辛さがあったので、意外性がありました。

何年も観たかった作品でしたが、機会に恵まれずしれっとアマプラに来てるのを見つけたのでようやく鑑賞。観たいと思ってから時が経ち過ぎて、正直熱は冷めていたんですが…想像してたタイプの作品とは違っていい意味で衝撃的でした。ラストスパートが少し凝縮され過ぎて忙しなかったので、もう少しゆったりこの世界観に浸りながら観ていたかった。

ジェフリー・ラッシュが素晴らしかった。ちょっとやばそうな瞬間の顔つきとか知り合いにそっくりで、ハラハラするくらいリアリティのある名演でした。

ジェフリー・ラッシュって「パイレーツ・オブ・カリビアン」で観た時は怖いイメージ強かったけど、深みのある作品で観ると心掴まれる表情がなにしろ絶妙で 大好き。目が違うんだなぁ…魅了される素敵な俳優さん。
みほみほ

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