ノーランからコミック世界への「返還」
完璧な結末を見せた前作『ダークナイト』が、シリーズのテーマを全て語り切ってしまった。それに続く本作は、あまりにもリアル志向=「ノーラン世界」になり過ぎたシリーズを、本来の居場所「コミック世界」に戻す。イギリス人であるノーランが、バットマンをアメリカ(コミック)というホームへ返したのだ。
思えばこのトリロジーは、
1作目:前半コミック➡後半リアル
2作目:全編リアル
3作目:前半リアル➡後半コミック
と、見事な円環構造を成している。
その為に無理矢理なコミック的な表現が後半は増える。結果、本作単独での低評価は致し方ないと思うが、トリロジーで見れば実に美しい「往きて還りしオデッセイア」になっているのが凄いよな。
更にこのリセットで、後世の映画界もバットマン映画が作りやすくなったと思う。ノーランがそこまで計算したかは分からないが、そうだとすれば、まるでひっそりと身を引いたブルース・ウェインそのものじゃないか。
エピローグをメタに見れば、ブルースと視線を交わすアルフレッドはノーラン自身だ。カッコ良いとはこういうことか。