ちぇり

ゴダールのマリアのちぇりのネタバレレビュー・内容・結末

ゴダールのマリア(1984年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

『追悼 ジャン=リュック・ゴダール祭』にて鑑賞。ゴダールの作品の中でも本作は比較的マイナーで、劇場での上映機会も少ないとのことだったので今回鑑賞できて良かった。
映画を専攻して学ぶ者として、ゴダールの作品を全然みていないのはまずいと思いこの機会に劇場に足を運んだのだが、おそらく「勝手にしやがれ」とか「カラビニエ」とかの有名作品から見た方がゴダールという映画監督の人物像はよく見えたのかも知れない。しかしパンフレットの、口紅を塗る女性の横顔に一目惚れし、この作品を見ることに決めた。結果としては大満足。
あらすじなどを全く見ないで行ったので最初はかなり困惑したが、登場人物たちの名前からキリスト教の聖書が元になっていることが分かると、物語が見えてくる。他の人のコメントにもあるように、これは処女懐胎の物語であり、聖母マリアの受胎告知の現代版解釈と言ったところであろう。少女マリアは恋人ジョセフと性的な関係を持っておらず、処女であるにも関わらず、ある日突然妊娠をする。この妊娠は、可憐な少女とその少女から「叔父」と呼ばれるガブリエルという名の男がガソリンスタンドに彼女の妊娠を教えに来ることで発覚する。これが聖書で言う「受胎告知」の場面。針子であったマリアの部屋に窓から突然天使2人が入ってきて、マリアに妊娠を告げるあの物語の構図そのままである。当然マリアは困惑し、苦悩する。肉体と魂の思惟の間で、彼女は自らの聖母としての運命を受け入れる。他にもイブとかジョセフとかヨハネとか、聖書の物語を匂わせる名前だらけでかなりヒントはあるが、それでも難解ではあるし、聖書の知識が無ければさっぱり分からないとは思う。知識によって物語の筋立てが少しだけ理解出来た喜びもあるが、それより1960年代のフランス映画の雰囲気とか言葉の流れ、映像の耽美さに熱中した。他の人が指摘するように音楽の使い方とか時系列や場面の分かりにくさは確かに気になったが、まあこれが初ゴダール作品なのでこんなものなのかと。音楽に関して言えば、確かにぶつ切りの部分や短すぎる挿入の部分がある多く、当時の技術的に会話の音声と重ねられなかったのかな?などとも考えたが、重なっている部分もあったのでそうではなさそう。ただのゴダールの手法のひとつみたい。これがヌーベルバーグかぁという感じ。
ちぇり

ちぇり