まりぃくりすてぃ

感傷的な運命のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

感傷的な運命(2000年製作の映画)
1.3
ふぉむふぉむで、ふぁおふぁおで、くっちりびっちぇな退屈映画。
原作はもちろん「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(Mヴェーバーの1905年の論文)だよ。そっち読んだ方が手っとり早い。

ジャンの人生や仕事話への興味なんて、3時間も続かなかった。ムリ。大河意識はどうでもいいから、とにかく半分以下にまとめなさい。脱臼リアリティーなさすぎてくだらない。
牧師辞めたくせに生にしがみつきづづけたこんな男の人が主役だってなら、私たち全世界約70億人は生まれながらにして全員スーパースターだよ! アサイヤスがこれを冗長じゃない良作だと自負しちゃうんだったら、せめて同じ調子でいろんな百人(フランス国民のほか植民地の人々も選んでさ)を主役にして百本撮ればいい。地球が退屈さに満ち満ちる前に、私が全部踏みつぶしてあげよぅ。

序盤は好感。良テンポだったから。しかし、会話が多すぎ。ムダに疲れる。固有名詞を(呼びかけでなく)三人称文脈でやたら登場させるせいで、“人物相関理解が一瞬じゃムリな場合だってあるのに”感に少し苦しまされる。置いていかれそう。この私がきっとバカなんだろうとおおらかに受け取り、舞踏会のスキップ等々に一応目を奪われてあげてた。
ドラマな映画じゃ全然ないのはリアリズムゆえ?
いや、徐々に私はちゃんと気づいた。リアルじゃない。夫婦で仕事話ばっかり繰り広げたりなど社会性剥き出しな展開にしてるっぽいけど、台詞も言い方も1900年代初頭リアリティーが全然ないよ。喋りの土台となる各自の佇まいが制作年(2000年頃)そのまんま。時代考証とかじゃなくもっとデリケートな部分で、心がけが成ってない。NHK番組みたい。もちろん脚本こそ悪い。
世界暗黒史上ひときわドス黒く光る「ヴェルサイユ体制」等々をやがて生み出したとおり、その頃の人類なんて今よりももっと考え方や語り方の平均値がダサかったはずなんだ。例えば世界最高の数学者ガロワが若くして決闘で死んじゃったりした近代最後期とモダンとの、中間地点があの頃なんだから、とにかくもっと誰も彼も自信なさげにトツトツふらふら喋るべき。ジャンなんて、牧師を辞めた時点で酒びたりになって弱ってくべきだった。そもそも、こんな人と結婚する気に私はならない。
むしろ、ミアハンセンラヴ演じる娘っ子のその後だけが気になる。

センス・技術的な褒めどころも皆無に近いバツバツ映画だが、ただ一カ所、ジャンがポーリーヌと会社運営について室内で話し合ってるとこで、ジャンが何か言ってすぐ言いなおすところのキャメラがポーリーヌへパンしかけて途中で戻ったのが、生きてる目線みたいでグッときた。
それと、ラストの死んだふりの直前で「作品が失敗だった」と台本でちゃんと認めた。これは騎士道精神かな?