ボブおじさん

荒野の七人のボブおじさんのレビュー・感想・評価

荒野の七人(1960年製作の映画)
4.3
「荒野の七人」がこのサイトで思いのほか評価が高くないことは理解できる。そもそも1960年以降、本格的な西部劇はほとんど作られなくなっており、テレビ放送も激減した。従って50歳以下の人は西部劇そのものに対する思い入れが50代以上に比べて少ないのだろう。

だが、私が子供の頃は、テレビで西部劇映画を年中やっており、中でも「荒野の七人」は私の大のお気に入りだった。

1番憧れたのはスティーヴ・マックイーン演じるヴィン。彼の華麗な身のこなしとガンアクションは、何度も真似して遊んだものだ。

前置きが長くなったが、この映画は数ある西部劇の中でも間違いなく傑作映画と言える1本だ‼︎

黒澤明の「七人の侍」に感銘を受けたユル・ブリンナーが舞台をメキシコに設定して自らの主演でリメイク。監督は、アクション映画の名手ジョン・スタージェス。音楽は、あのエルマー・バーンスタインが手がけている。

七人のガンマンを演じるのは
黒ずくめのスタイルで眼光鋭いリーダーを演じるユル・ブリンナー を筆頭に
ホルスト・ブッフホルツ
ロバート・ヴォーン
ブラッド・デクスター
そしてまだ大スターではなかった
スティーヴ・マックイーン
チャールズ・ブロンソン
ジェームズ・コバーン
という夢のようなキャスティング。

悪役のボスを狡猾に演じた、後の名優イーライ・ウォラックも含めて、この映画をきっかけにスターになった俳優も多く、今となっては驚くほど豪華な顔ぶれだ。

オープニングクレジットと同時に高らかに鳴り響くあのテーマ曲。ユル・ブリンナーとスティーヴ・マックイーンが初めて顔を合わせてから手際よく七人を集める場面などオリジナルの207分を128分にギュッと凝縮しているのも好感が持てる。

基本原作の流れを踏襲する一方、オリジナルでは、ほとんど見えてこなかった〝盗賊の頭の人物描写〟に厚みを与えるなどの独自色も見られる。演じたイーライ・ウォラックと主演のユル・ブリンナーとの度重なる会話のやり取りでスタージェスの手腕が冴える。この人物を設定したことにより本作は、独立した一本の作品として見事に成功している😊

名作映画リメイクの宿命で、アクション映画史に残る〝別格の本家〟と何かと比較される映画であるが、オリジナルに最大限のリスペクトを示しつつ、アメリカ映画らしく、西部劇らしく、男らしく、そしてジョン・スタージェスらしく堂々とリメイクされた映画であるにも関わらず、日本では過小評価されているのが返す返すも残念だ。

なお、この映画を最後に正統派アメリカ西部劇は衰退し、数年後にセルジオ・レオーネが〝マカロニ・ウエスタン〟を引っ提げて登場することになるのだが、それはまた別の話😊



〈余談ですが〉
なんの統計的データもない私の勝手な思い込みだが、この映画の評価は50代60代の評価だけ突出して高いのではないだろうか?

理由は単純明快、その世代にとってこの映画は、まさにリアルタイムの作品だからだ。とは言っても1960年に製作された本作を当然ながら我々の様な5、60代が劇場で見ているわけではない。

リアルタイムで見たと言うのは、当時繰り返し放映されていたテレビでの放送のことだ。その当時、この世代の年齢は10代から20代前半という最も映画に感化される年代だったはずなのだ。私も小学生の時にこの映画を見て、そのアクションとテーマ曲に胸を躍らせた😊

見たい作品を見たい時に見られるようになったのは、世の中にレンタルビデオが普及する、それからずっとずっと先の話で、それまでは、劇場公開を逃せばテレビ放送される映画だけが映画との出会いの場であった。

ノーカット、ノートリミングを条件とし、おまけにテレビの放送コードに引っ掛かる台詞もある黒澤映画は、地上波での放送が極端に少ない。従って我々世代は、まず先に「荒野の七人」を先に見て、その何年も後に黒澤明監督の「七人の侍」を見たはずだ。

従ってレンタルビデオやサブスクで両作品を見た人たちと我々世代では、この作品に対する思い入れが圧倒的に違うのではないか?というのが個人的な思いなのだ😅