オーケストラと、ひと。
何故かFilmarksでのスコアは低いが、私の愛する小品である。
フェデリコ・フェリーニ。
本作はとあるオーケストラのリハーサルの様子を描くモキュメンタリーである。
構造的には二重底の構図となっており、楽団全体からその構成員各人の担当楽器への愛へスポットライトを当て、更に其処から小集団、或いは敷衍して国家其の物の普遍的な盈虚までをも描いている。
フェリーニの作品には、ひとへの愛情が揺曳している。
「ひと」は猥雑で視野狭窄で弱くまた場に流され、けれど温かみと自省心の有る芯の強いものとして捉えられており、本作では斯様な「ひと」が作る「集団」をも此の視点で描かれる。
指揮者の役目は、単にタクトを振るうだけではなく、楽団員に同じ方向を向かわせ作品を創出する事である。
本作では破壊と云う外圧があったが、如何に外圧に依拠せず集団をひとつにするかが指揮者、延いては指導者の役割となろう。
他山の石としたい作品である。