大作でありながら、これだけ映画で遊べるのは世界中でスピルバーグくらいじゃないだろうか。
光使い方が素晴らしいのはさることながら、ふんだんに盛り込んだ黒澤明やヒッチコックなどを思わせる演出の遊び心。正直、もうちょっと簡単に映画を作れば、たやすくアカデミー作品賞なぞ取れただろうに。でも彼のシネフィル魂がそうはさせない。
クライマックスからラストに向かっての一連のシーンは笑い泣きで、もはや何が何だか分からなくなってくるレベルである。
そしてSF映画の典型的な駒である、森へ到着した宇宙人を扱っているが、これはれっきとした家族ドラマである。
ゲームの輪からのけ者にされていた少年は、家族一人一人との秘密の共有を通じて、絆を獲得してゆく。
あくまで滑稽に描かれた大人の存在は、これが子供達の成長を描いた作品であることを強く意識させる。空飛ぶ自転車やあり合わせで作られた交信機は子供の冒険譚としては十分な玩具である。
始めから最後までお腹いっぱい楽しませてくれる名作。
ネタバレ↓
曖昧に描かれた政府機関の人間の滑稽さが終始素晴らしい。物々しい仕掛けを家のそこかしこに仕掛けておきながら、宇宙人にごくごく一般的な心臓マッサージを施す。そして、結果何も出来ないどころか子供たちにあっけなく出し抜かれ、逃げられる。自転車で森へ向かう子供達を追って脇から現れるシーンは、もはやフラッシュモブのよつである。
つくづく大作でここまでB級映画的な遊びをしていいのだろうかと心配になる。。。
愛人とメキシコに行ってしまったという父親は、もはや戻ってくることはないのだろう。ラストの別れのシーンでの少年達の表情は、その覚悟を物語っている。