Tラモーン

[リミット]のTラモーンのレビュー・感想・評価

[リミット](2010年製作の映画)
3.7
ちょっとお久しぶりのレビューです!
社員旅行のバリに向かうエコノミークラスの座席に窮屈に収まりながら鑑賞するのはこちら。


男が目を覚ますとあたりは真っ暗。ジッポの灯りで照らすと自分が古い棺桶の中に閉じ込められ、地中に生き埋めにされたことがわかる。脱出を試みるが棺のフタはびくともしない。そこへ棺の中に置かれた携帯電話に着信が入る。


めちゃくちゃワンシチュエーションな1人舞台サスペンス。
画面には棺に閉じ込められたポール・コンロイ(ライアン・レイノルズ)ただ1人。棺桶の中に置かれた携帯電話を唯一の希望として、妻や会社、FBIや国務省に助けを求める彼の電話の中で次第に彼自身の素性が明かされていく様が面白い。

"俺は死にそうなんだ、わかるか"

電話に出ない妻、冷たい態度の会社やFBIにイライラを募らせるポール。
さらに追い討ちをかけるように身代金を要求する犯人からの電話。そして別の場所で人質に取られていると思しき同僚の女性の写真。

電話相手の声と、ポールの表情だけで息詰まる展開を飽きずに見せる90分という尺もとてもいい。

ただしこの映画はとにかく意地悪だ。希望と絶望を行ったり来たりして観客を飽きさせない作品は他にもあれど、この映画は希望を見せる時間が短過ぎる。
ふと気が緩んだかと思えばすぐに緊張で縛り上げられ、一刻の猶予もないシチュエーションに放り込まれる。

国務省の人質対策担当のブレナーとの会話に希望を見出したポールの元へ間髪入れずに犯人からの着信が入るシーンは見事。

そして絶体絶命の危機が迫るラストシーン。怒涛の畳み掛けと、ほんの少しだけ顔を出す一縷の望み。
そこからあの鬱エンドは意地悪すぎるだろ。

エンドロールの"Mark White"がとてつもない後味の悪さを残す。

"正しいことをしろ"

ポールが正しくないことをしたから?この作品も世の中も、正しくない行いはあれど、正しくない人間ているのかな。
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