こたつむり

ドライヴのこたつむりのレビュー・感想・評価

ドライヴ(2011年製作の映画)
4.1
♪ 魂が虹のトンネルをハイスピードで
  駆け抜けてゆくのさ

レフンといえば龍角散…じゃない『ドライヴ』。巷で評判だったのは知っていましたが、ようやく鑑賞しました。なるほど。とても選曲が巧みなのですね。

まるで、心のひだをくすぐるかのように。
シンセサイザーの音を刻んだり、減衰したり、拡張したり。物語を活かすように感情を揺さぶるのです。また、それに呼応する暴力表現は末広がり。

まるで、ラッパから飛び出る紙吹雪のように。
小さな不穏が大きな不安になり、舞い踊るは血飛沫と脳漿。苛烈だけども鮮やか、けれども静かに深く反逆的。ゆえに心が削られるわけで。

まるで、針が血流に乗って心臓に届くように。
奥の奥の奥の方で“やりきれない”から、思わず祈るのです。

動け、と。
瞬きしろ、と。
完全に監督さんの手中に陥っているのは免れず。

そりゃあ、巷での評判が良いのも納得ですね。
しかも、役者さんの魅力も十二分に引き出しているのです。ライアン・ゴズリングの存在感を活かしているのは言わずもがな、キャリー・マリガンも魅力的でした。

特に“髪の長さ”は見事な選択。
彼女の髪が長かったら…きっと没入感は三割減(大袈裟)。また、若くして授かった子供との触れ合いも良いのです。主人公が彼女に惹かれる理由にググっと共感しますからね。

そして、その筆致が巧みだからこそ。
主人公の台詞が少なくともガツンと惹き込まれるわけで。これが全て計算ならば、やはり強烈な演出力だと思います(逆に言えば、人を選ぶ作風でもありますが)。

まあ、そんなわけで。
静かなドラマと激しい暴力。緩やかな音楽と素早いテンポ。両極端の要素を掻き混ぜずに成立させた物語。感性が鈍る前に鑑賞することをオススメしたいです。

ただあえて難を言うならば。
スタッフクレジットの筆記体。
あれはスタイリッシュ…ではなく中学生みたいなセンスだと思いましたよ。かふかふ。
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