20世紀中国史を背景に、2人のスター京劇俳優と周囲の人々の、愛憎入り交じった人間模様。国史のターニングポイントに、翻弄された芸人たち個々人のドラマを重ね合わせるという作りは、中国版『旅芸人』と言い得るが、基調は全く異なるブロックバスター作品。絢爛で優れた出来だが、不快な点が目立った。最も酷いのは、子供時代、トレーニングの一環としての虐待と、性的搾取で、見るに耐えない。京劇史の汚点も記録したかったのだろうが、大衆向けエンタメ作品で描写すべきか、疑問が残った。彼らの俳優としての絶頂期でも、姫役の俳優が、王役の俳優にプライヴェートでも思いを寄せるという、プロらしくない公私混同にいらつく。京劇について、そもそもどんなものか、主要演目の「覇王別姫」、かつて有していた想像を超える政治的影響力など、教養的な概要を知ることができたのは良かった。一方で、自分が映画に、個人の波乱万丈な人生というコンテンツ、特に現実の社会の推移と絡めて描かれたものを求めていないことを再認識
