Longsleeper

灰とダイヤモンドのLongsleeperのレビュー・感想・評価

灰とダイヤモンド(1957年製作の映画)
4.5
独ソ分割占領のみならず、レジスタンスのなかでも東西陣営に分かれ、戦後もテロが続いていたポーランドを、風刺的象徴的に切り取った名作。
中盤までは「一体どこへ向かう話なんだろう」と思わせるけど、終盤の強烈な余韻で一気にまとめにかかっている感じ。
ポーランドの歴史に詳しい人以外は、YouTubeにある町山さんの解説を視聴前後に観るのがおすすめ。
カティンの森や分割占領の知識だけでは本作周辺の事情がよくわからない。
それぞれの登場人物が、当時のポーランド国内の人々のさまざまな立場を代弁させているのは、解説見るまでわからなかった。
検閲対策で主人公をぼかしているせいもあって、映像の意味を汲み取るのが難しい映画だと思う。
途中バーで『黒い瞳』が流れてるなあ、と思ったら、後半の展開がまるで歌詞を辿るようで驚いた。
その他の音楽にもすべからく意味があって、映像だけでなく音楽も雄弁な映画。
戦勝ムードに浸る上流層と、ぶつかり合い葛藤するマチェクやアンジェイたちの対比が印象的。
第二次世界大戦は終わったけど、ポーランドにとっては新たな苦悩の始まりだった。
終盤で踊っているブルジョワたちの顔が誰一人明るくないのも象徴的。
シャチューカがアメリカ製のタバコを吸い、マチェクがハンガリー製を吸うのは、一服して心を紐解く瞬間には所属する陣営も関係ない(オフの場面では分かり合えるかもしれない)ことの示唆なんだろうか。
抵抗し続けた末に恋を知り、「普通の幸せ」を強く望むようになったマチェクを見て、全然違う話だけどGoTのセリフ「誰が非難されるかは時代によって変わる 一つ変わらないのは自分が誰を求めるかよ」を思い出した。
愛を知ることが、勝敗や成否の対立軸を一掃するほどのインパクトを与えてしまう。
時代に逆らえなくても、あるいは乗れなくても、目の前にいる人と通じ合えることで幸せになれることを知ってしまった苦悩が色濃い。
人違いで殺された若者の婚約者が泣いてたことの意味も、この時ようやく分かったんじゃないか。
ワルシャワ蜂起について熱を持って語る登場人物たちを見て、そりゃ執念の大修復作業したくもなりますわ…と今更納得した。
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