悪魔の毒々クチビル

美しき冒険旅行の悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

美しき冒険旅行(1971年製作の映画)
3.8
賭けはここまで

父親と砂漠に旅行に行ったら父親が自殺しちゃって砂漠に取り残された姉弟が、たまたま出会ったアボリジニの少年と行動を供にするお話。


1971年公開のニコラス・ローグ監督作。
フィルモグラフィを調べたら「赤い影」だけ観たことありました。これまた懐かしい。
特に観ようと思わなかったんだけど、U-NEXTのあらすじを読んで「何だその気の毒過ぎるあらすじは…」と逆に気になって観てみた次第です。
因みに原題のWALKABOUTはアボリジニの少年が行う成人の儀式で、ざっくり言うと狩りとかして大地の恵みを感じながら一人旅に出るもんだと思ってもらえれば。

序盤で唐突に訪れる父親の自殺。なんだけど、これ最初子どもも撃ち殺そうとしていたから無理心中のつもりだったのかな。
情けだったのかは不明ですが、結局姉弟は置いて自殺しちゃうんだけど。
姉は中学生ながら、弟はまだ6歳とかなのでこの時点で大分詰みますよね。

そうして砂漠を放浪する内にアボリジニの少年と出会うんだけど、当然互いの言葉が通じる訳もなくコミュニケーションこそ難航するも取り敢えず付いてくるのねオッケーくらいの感覚で砂漠の旅が始まります。
劇中頻繁に映される砂漠の動物たちの愛らしい表情や弱肉強食が鮮烈で、個人的には角があちこちに生えたトカゲがめっちゃ格好良くて気になりました。
弟が言葉は通じないけど少年に物語を聞かせてあげるシーンでは、カット割にページを捲るような演出が施されていたりと独特な要素もありました。
狩りで得た動物を解体するシーンを肉屋の解体と被せて映したりと、メッセージ性を秘めた細かい拘りは結構あったんじゃないかと。
不意に出てくるモブキャラの謎の掘り下げは「お、おう」ってなったけど。

姉が全裸で川を泳ぐシーンはかなり印象的で、普通に股間まで映っているんだけど演じたジェニー・アガターは当時16歳だったそうでね。
まぁ今だったら絶対アウトだろうけど、監督は一応成人と見なしてあのシーンを撮ったんだと。尚一部の公開版では丸々カットされたそうな。
ジェニーさん「チャイルド・プレイ2」とか、「狼男アメリカン」みたいなホラーにも出演していたりします。

それで一緒に行動していて少年が段々とお姉さんに恋心を抱いていって、そこは何となく予想していたけどその後のアレは結構衝撃でした。
言葉の壁、と言うものに加え互いに知らない文化の違いが如何に障壁になるか、あそこは中々凄かったです。
別に誰が悪いって訳でもなく、少年からしたらあれが純粋な想いの形だし、何も知らずに観る側は普通に怖いと思う。気丈に弟を支えて来たとは言え、彼女も14歳程度なんだし。

そのままエンディングまであっさり行きますが、あの頃を振り返って何を思っていたのか。

普段観ないタイプの作品だったので、色々と新鮮に映るものがありましたし、ホラーばっか観ていたから例の全裸水泳シーンが少し死亡フラグっぽく見えてしまって、おじさんもすっかり心が汚れてしまったなぁと。