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ゴースト・ドッグのNONAMEのレビュー・感想・評価

ゴースト・ドッグ(1999年製作の映画)
3.2
映画の世界では 特にアメリカ映画の世界では 入れ替わり立ち替わり作品の群れに加わっては消えていくか 作家の無名性に淫するか そのどちらかしかない。ジム・ジャームッシュはこのハードルを乗り越えようとしてきたごく少ない監督のうちのひとりだ。映画製作における完全な機限を守りつつ 強烈なインスピレーションに充ちた作品を作り しかも自身の名を知らしめるのに十分な配給をも得ている。あいにく日本では 違いのわかる人は彼の名前を知っている。しかしここ数年 ジャームッシュから届く作品は彼のスタンダードな部分が強調されたものばかり。そんな衝動から99年のギャングスターラップムービー(とでも言うべきか)『ゴースト・ドッグ』を“レビュー”する。
本作はひたすら“オフビート”で突き進み それと同調するかのようにRZAのスモーキーなHIP HOPが特徴のひとつとなっていて その効果が映画をさらにけだるくしている。ゆっくり映画の中へと導き入れるというか 夢のような雰囲気をかき立てるというか ゴースト・ドッグの世界へ入り込んでいく というような意図なのかな?まあ やはりジャームッシュ映画の すべてが“カッコイイ”で埋め尽くされている。まず鳥の視点から追い 次に地上でその歩く姿を追っていくシーンはクールだし ゴースト・ドッグの家に少女の写真があるだけでも物語に深みが出てくるように感じる。隅々まで“ジャームッシュ印”が押されている。
監督自身語っているとおりゴースト・ドッグのテーマのひとつは「バットマンはどうしてバットマンになったのか」。だがゴースト・ドッグの背景をすべて明らかにしていない。観客にはあえて提示していない。そう 『ゴースト・ドッグ』は“漫画的構成”になっているのだ。もうこれ以上説明するのはやめよう。ジャームッシュのキャリアの中でも唯一の“漫画的な映画”。そんな『ゴースト・ドッグ』でもアメリカ映画界を切り裂いていくには十分である。『パターソン』の前にぜひ。
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