翼

ゴッドファーザーPART IIの翼のレビュー・感想・評価

ゴッドファーザーPART II(1974年製作の映画)
3.8
ゴッドファーザーとしてのし上がる過程でファミリーとの結束が描かれる、光の中にあるかのような若かりしヴィト・コルレオーネと、粛清と決別の螺旋に堕ちていく闇のマイケル・コルレオーネの対比。シチリア音楽が見事に世界を創り上げ、ギャングでもヤクザでもない『マフィア』という生き方、哀しい生き様をその儚い旋律に乗せて強調している。か細く鳴るマンドリンが響けば、残酷さとノスタルジーが混ざり合う絶妙な心境に私たちを誘う。二作目にして完全な世界観と言える。

ファミリーの為にと繰り返してきた粛清も、その矛先が当の家族に向き報復の螺旋から降りられないゴッドファーザーの孤独。最早マイケルさえも何のためにマフィアをやっているのかわからない。深く深く沈みこむアルパチーノの眼光の演技が冴え渡る。
陰惨な現実の狭間に思い出される過去の家族の一幕はなんとも言葉にし難い叙情。在りし日の兄たちと前髪を下ろして幼さが残るマイケルが囲む家族の食卓は端的に眩しい。
転じて若き日のヴィト、一介の労働者がドン・コルレオーネとなるまでの物語はまさにサクセスストーリー。当時無名のロバートデニーロの放つ人としての厚み、魅力が「人に愛されるマフィア」という矛盾する存在の説得力を際立たせる。若き日の父が眩いほど、マイケルの闇がより引き立ち、二人のドン・コルレオーネの非なる人生の対比がゴッドファーザーの深淵を描いている。

名作と呼ばれる多くの三部作の中作は難解。この作品も多分に漏れず。マフィアの口数よろしくとにかく説明が少なく、一を聞いて十を察することが難しければ理解が追いつかない。ゴッドファーザーの物語の全容を知った上で再鑑賞する時こそ本質的な理解に追いつくのだと思う。
一度目の鑑賞での感想は★3.8。二度目できっと変化する。今から楽しみである。
翼