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ザ・ファイターのエディのレビュー・感想・評価

ザ・ファイター(2010年製作の映画)
2.0
全くスタイルの違う異父兄弟のボクサーが活躍するという実話に基づく映画だが、クリスチャンベールの役作り以外は魅力を感じなかった。
映画は町の英雄面して誇らしげに戦績を語る兄ディッキーに密着したドキュメンタリーのように映画は進行する。この兄はドラッグに溺れ実質引退しているので、今は母アリスと一緒になって弟ミッキーのトレーナーやマネージャーをしている。しかし、二人の好い加減なマネージャーのせいで、ひどいマッチメイクばかり組まされて腐っていたミッキーは、恋人シャーリーンの助言もあり、家族と別れベガスでマネジメント契約を結び王者を狙う。。。

最初の数十分でイラついてしまったが、それはシーン切り替えが頻繁過ぎて、主人公たちに感情移入し難いからだと思う。ドキュメンタリースタイルで日常を描いているのでいろんなエピソードが出てくるのだが、そのシーンのいずれもが十分に描写しないで次のシーンにどんどん切り替わっていく印象を受けるのだ。まるで倍速で観ているかのように雑な人物描写で、クレイジーなアリスや姉たちの喧騒やカオスを描くものだから、大勢の姉貴と二人の父の関係のシーンなんて2回巻き戻して観ても何を言っているのかさっぱり判らなった。このため、登場人物に共感を得るどころか不快感を感じてしまった。
そもそも、この二人の物語は2時間の映画にするほどの厚みがないように思えた。メディアの前で大口叩きトラブル自慢をネタにするところなんか日本のK田ファミリーにかなり似ているので、このファミリーは「家庭や人間性の魅力はなく、ボクシングだけではなく話題性」に思えてしまう。そのクレイジーな家族のクレイジーぶりを散々強調してあるので、ミッキーとシャーリーンが袂を別ったのは良く理解できるが、ラストの大団円的なオチは白けてしまった。

頂点を目指してストイックに日々精進しているように描いていないのでスポ根的な感動はないし、ラストも予定調和的だし、かといって不快に描きすぎたので人物に共感が出来るわけでもないので、「なんでこのストーリーを映画化しようと思ったのか?」と感じてしまった。
クリスチャンベール演じるディッキーは、ドラッグ中毒的な異常さを感じさせてくれるので、彼のストイックな役作りは毎度感心させられるが、それを観る以上の価値を見出すことは出来なかった。名作ロッキーの足元にも及ばないと感じた。
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