Tラモーン

フィッシュストーリーのTラモーンのレビュー・感想・評価

フィッシュストーリー(2009年製作の映画)
4.0
久しぶりにバンドモノが観たくなったので鑑賞。恥ずかしながら本はほとんど読まないんだけど、伊坂幸太郎は好きで『フィッシュストーリー』原作は読済。


2012年。地球に巨大な彗星が衝突するまであと5時間。人々がすっかり避難し、誰もいなくなった商店街でも営業を続けるレコード店では、店主と常連客が世界の終末を前にしてもなお音楽談義を続けていた。店主が希少なレコードとして引っ張り出してきた一枚は"早過ぎた日本のパンクバンド"と称されるロックバンド「逆鱗」の「フィッシュストーリー」というレコードだった。セックスピストルズがイギリスでデビューする1年前に彼らが残した全く売れなかった1枚のアルバムが、時を越えて世界を救うー。


原作では世界中のコンピュータネットワークの危機だったのが、地球滅亡の危機まで壮大にアップグレードされた映画版。原作にはない挿入されたシーンも多く、正直なところ序盤はかったるくてイライラするシーンも散見された。
それでもこの小説、映画が気持ちいいのは時代の違う複数のエピソードがなんの脈絡もなく配置されているように見えて、最後には時代を越えた1本の大きなストーリーを成すところ。つまらんな〜と思っても我慢して最後まで観て下さい。

そして複数のエピソードを束ねる役割を担うのが1975年を舞台にした、ロックバンド「逆鱗」の最後のアルバムレコーディングにまつわるストーリー。
MC5やストゥージズ、ベルベッツに影響を受けた彼らの音楽は正真正銘のガレージパンクだったが、「パンク」などという音楽ジャンルすら存在していなかった当時の日本では彼らの音楽は見向きもされず、発表した2枚のアルバムは全く売れなかった。
レコード会社から契約を切られる前の最後の一枚。売れないとわかっていても自分たちの信じた音楽を貫き通す4人と、彼らを信じるマネージャー岡崎の思いの丈が詰まったレコーディングシーンは胸が熱くなった。

"これは誰かに届くのかな?"
"この曲は誰に届くんだよ?届けよ誰かに。頼むから"

最後のレコーディングを終えた5人が清々しい表情でホラ話で笑い合う居酒屋のシーンがたまらなく切なくて大好きだ。


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少し時間が空きましたが去る5/8、Zepp NagoyaにDOPING PANDAの再結成ツアーを観に行ってきました。
約2年半ぶりのライブハウス、そして人生で初めてようやく生で観られるドーパン。久しぶりの開演前の緊張感をしばし味わい、暗転からのステージに3人が登場し、ピンスポに照らされた"ロックスター"フルカワユタカがイントロのギターを弾き始まった1曲目は『Crazy』。

https://youtu.be/SMPeImA4u0M

"I'm Sorry Me. ミラクル起こせなくてさ"
そんなことないよ!ミラクル起こしてくれたじゃん!ありがとう😭

「早過ぎたダンスロック」とか「サカナクションになれなかったバンド」とか解散後いろいろ言われたけど、10年の空白の間もちゃんとドーパンの音楽は届いてたよ。解散してる間に生まれた息子も「ドーパンカッコイイネ!」って一緒に車で聴いてるよ。

熱意を持って作られた音楽は絶対誰かに届くし、ほんの少しだけでも世界を変える力を持ってるとぼくは思います。
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