風に立つライオン

となりのトトロの風に立つライオンのレビュー・感想・評価

となりのトトロ(1988年製作の映画)
4.4
 子供達が未だ幼児期で、自分もバリバリのサラリーマンをやってた頃に観たアニメである。

 1988年制作、宮崎駿監督によるヒューマン・ファンタジーアニメの傑作である。

 アニメの時代設定が昭和30年代初期で懐かしい風景と生活様式が描かれていて直ぐに入り込んで観たものである。

 サツキとメイが引越し用の三輪自動車の荷台に乗って里山の畦道をガタゴト走る、
 引越し先の家の小上がり縁側、
 そこを両膝立ちで上がり込むサツキ、
 釜戸とタイルの五右衛門風呂、
 薪に屋根上のブリキ煙突、
 夜の蚊帳、
 全てが「ウワー!懐かしい!」の心持ち。

 子供達が見るおかしな生き物達が登場し、ファンタジーの世界へ。この独創性とファンタジー感溢れる世界観はディズニーを凌駕していると言ってもいい。
 とは言えメイの冒険は「不思議の国のアリス」モードでスタートする。

 メイが行方不明になって村人達の捜索が始まるが、田んぼに浮いたサンダルが見つかった瞬間のショックは観ている家族全員が味わっている。その後、ハァーよかった!

 夜のバス停で傘をさし、おとうさんの帰りを待つメイをおんぶしたサツキ、近づくトトロが真横に立ちジャンプすると木々から雨垂れがザーっと傘に落ちて来る。これよくやった。

 子供達が病院にいるおかあさんに逢いたいが為に、この停留所で待っているとやって来たのは猫バス。ウィーンとドアが開いてサツキとメイが乗り込む。バスの前面表示が「塚森」から「七国山病院」(宮崎監督が敬愛するヒッチコックをもじったもの)に変わり猛スピードで出発。

 ここに登場する大家のお婆さんは、ラピュタでは海賊船の女船長ドーラやもののけ姫のエミシの占い師ヒイ様、千と千尋の湯婆婆などに出演している。と、そのように思えるほど宮崎アニメのキャラクターは一個の俳優として登場してくるようにも感ずる。

 そして宮崎アニメおけるナウシカから始まって全作品に共通しているのは空を飛ぶという「飛行」の概念である。主人公はもちろん何かが必ず飛行している。

 風変わりだがノスタルジックでファンタジーがあり郷愁もある、何とも不思議な感動を覚える傑作映画である。