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太陽を盗んだ男のyutaのレビュー・感想・評価

太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)
4.0
タイトルが個人的に凄い気に入って評価も高いので鑑賞。

まず気になったのが出演陣。
主演のジュリー演じる城戸は夜な夜な原子爆弾を作るという異様なキャラクターですが(タクシードライバーぽい)、なんとも嫌いになれない雰囲気があって演技や脚本の妙を感じました。
また、昼間学校では終始睡眠しているが夜になると嬉々としてプルトニウムを作るという変化もコミカルに描かれていて良かったです。
もう一人の主役と言っても良い菅原文太演じる山下はいぶし銀な魅力炸裂で、気だるい色男な雰囲気を醸し出す城戸と対比されていて面白かったです。また、しっかり真面目に仕事を全うする山下と不真面目な焦燥を持った城戸との対比も良かったです。
また、最初の老齢のバスジャック犯が天皇に直訴する(天皇制の名残り)のと城戸が政府に電話するのも対比されているように感じました。こうして考えると荒唐無稽ではなく意外と計算高い作品なんだなと思いました。

また、石原さとみに似たヒロインや城戸とコントのような絡みをする若き水谷豊、西田敏行など豪華かつ時代を感じて良かったです。

そして異常で無軌道なストーリー。特に城戸が原子爆弾を作るシーンは前述した通りコミカルに描かれており音楽も効果的に使われていました。(この映画は音楽も素晴らしい、現にエヴァンゲリオンにも使われている)
前半は終始そのような独特なテンポで進むので他の映画とは違う予想もつかない不思議な魅力を感じました。

そこまでは原子爆弾を作っている動機など謎が多く興味深かったのですが、当人はただ作りたかっただけで政府に要求するのはつまらないことばかり。(衝動だけで理由が無い)ここで若干肩透かしをくらいましたが、当時の若者(今にも通ずる)のやりたいことがなくつまらない日々を壊したい、爆破したい衝動に駆られるのもわからなくは無いなと感じました。(梶井基次郎の檸檬ぽい)

そして一番印象的なラストの一騎打ちシーンは山下の執念と城戸の人間としての性、その顛末が乾いた感じで描かれていて良かったです。そしてラストシーンの解釈も判断が難しく意見が分かれそうだなと思いました。
何てことを気付いたら結構長時間考えていて、それがこの映画の異常性を持った魅力で、謎、そして肝かなと感じました。何にせよ、今の時代では絶対無理な作品だと思いました。
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