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オールドのyutaのレビュー・感想・評価

オールド(2021年製作の映画)
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よくある映画として、展開を飽きさせないために死や恋愛などの陳腐なドラマを連発するものがある。今作も次から次へと様々な展開が怒涛のように起こり休む暇がない。とはいえ今作は設定とそれが合っている。というのもオールドは人生が加速する物語だからだ。数時間で何十年分も歳を取る人々は恋愛から妊娠、出産、老化、死亡など長い人生でゆっくり起こる出来事が圧縮される。その上で登場人物たちは適応の問題に直面する。この映画はシャマラン流のホラー描写が頻発し身体がぐちゃぐちゃになったり感染症がみるみる広がり描写は新しくグロテスクで面白かったが何より、一番怖かったのは、少し前まで子供だった男女が何も知らず妊娠してしまう所だ。それは映画の幻想とは違う適応できなさや教育の有無と繋がり薄寒く感じた。
またこの設定自体がある種、映画というものと重なっていると感じた。映画は人生を圧縮する。人生を時間で捉えた時に2時間では描けない。それ故に多くの映画は編集により時間を操る。とはいえ映画は人生の断片しか描けず、全てを語るより仄めかすだけだ。その点でその映画の圧縮構造を
示すメタファーとしてあの浜辺という舞台装置なのだと考えた。数分ごとに喧嘩したと思えば仲直りするのは奇妙な話だがそれが映画の一つの作用なのだ。(毎度のように監督はカメオ出演しているが今作は遠巻きからカメラで監視しているのも示唆的だ)
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