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太陽を盗んだ男のKKMXのレビュー・感想・評価

太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)
4.0
 主演が戦後最大のポップアイコン・沢田研二で、主人公が原爆を作り上げてストーンズ初来日を要求するというストーリー、そして横尾忠則のポスター(エンケンの『東京ワッショイ』を連想)という、これはどう考えても俺のガーエーだろ!とずっと思っていた本作。
 しかも自分のフィルマ友だちの中でもズバ抜けたロック魂を持つマリさんと柴三毛師匠という2人が揃って⭐️5という、どう転んでも俺のガーエーだろうと思っていた本作をついに鑑賞しました。


【結論】
 そこまで俺のガーエーではなかった。俺のガーエーはやはり裕也3部作だね、シェケナ!😎


 沢田研二演じるキドは、無気力な中学教師(理科)。孤独で内面空っぽのこの男は、裕也3部作の内田裕也そのものであります。
 しかし、ある日キドは引率していた生徒たちとともにバスジャック事件に巻き込まれます。その時に英雄的な活躍で事件を解決したのがブンタ菅原演じる山下警部でした。山下警部の勇気・内面的強さ・揺るがない自我に触れたキドは、何かに目覚め、やがてプルトニウムを盗み出してひとりで原爆を作り上げます!
 原爆を完成させたキドはボブ・マーリーの大名曲 “Get Up, Stand Up” をバックに踊り狂い、警察に連絡して脅迫し始めます。そして、自分の事件の担当者に山下警部を指名する…というストーリー。


 いや〜、キド幸せだわ!運命の相手に出会って内なる原爆を爆発させることができるんですからね。無を生きていたキドの前に高らかに有を生きる山下が現れたわけですから。本当は何者かになりたい、意味ある生を生きたいキドにとって、何者かで意味ある生を生きている山下は羨望と嫉妬の対象です。そして、キドにとっての父でもありました。だから、まぁ歪んだエディプスの話ですね本作。
 原爆を作ったあとに何がしたいのかわからなくなったキドですが、無意識下では山下を乗り越えて意味ある人生を生きたい or そうでなければ山下を巻き込んで共に爆死したい、という思いがあることは明白だと感じました。
 山下を乗り越えるには一度敗北しないとなりません。それすなわち象徴的な死であり、クライマックスで山下がキドに向かって吐いた言葉が、まさにキドの動機だったわけです。
 美人DJ・レイコも登場しますが、なにせキドは山下警部しか見えてないから影が薄い。本作は完全にキドと山下の物語でした。ある意味ラブストーリーだね!そんな俺だけど愛してくれるかい!


 虚無と孤独を抱えた人物が負の方向に突っ走っていくタクシードライバー的な物語には、どうしても俺は拭いきれない孤独を求めてしまうんですね。孤独じゃなくなると本質的に惨めじゃなくなるのです。
 で、この手の作品に俺は徹底した惨めさを求めているので、本作は抜群に面白かったけど微妙に求めるモノとズレていたのです。

 本作とは別物であることは百も承知だけど、やっぱり裕也3部作と比べちゃうね!沢田研二が裕也に見出されたという背景もあるから余計意識してしまう。キドは裕也に比べれば惨めじゃないじゃん、みたいに。裕也は対象なんていないから昏睡レイプに郵便局強盗ですよ。スケールのショボさも惨め。裕也は原爆なんか作れないから!パソコンでできることはゲームと、オMANコとタイプすることだけ!こう書くとマジで惨めだな裕也、やっぱり最高だ!
(ちなみに上記の“Get Up, Stand Up” のシーンはたまたま撮影現場に遊びに来ていた裕也がレコード会社に掛け合ってタダで使わせたとのこと!さすが裕也!リアル裕也は偉大なんですよ皆さん)


 でも、改めて書きますが、本作かなり面白かったです。裕也3部作に比べると好みじゃないだけで。前半はややダルかったけど、後半はなかなか息が詰まる。山下とキドの対決は凄かったし、アクションもメチャクチャでバカっぽいけど迫力抜群でした。
 ダブル主演と言っても過言ではないジュリーと文太はマジで名演でした。ジュリーのスターとは思えない、どっか気持ち悪いオルタナティブな狂気とか、文太の尋常じゃないギラついた生命力とか、本当にヤバかったです。

 でね〜、影の薄いヒロイン・レイコが超タイプだったんですよね!池上季実子が演じてるんですが、スレンダーでちょっと可愛らしさがあるけど美人タイプで、カールした艶々黒髪ロングがゴージャス!ファラ・フォーセットスタイルとでも言いますか、あの髪型リバイバルしないかな〜。声がちと甘すぎでしたが、最高でしたね。ただキャラとしてはイマイチでした。キドと山下の間に入るのは構造的に難しいから仕方ないですけどねえ。
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