しぇんみん

ミストのしぇんみんのレビュー・感想・評価

ミスト(2007年製作の映画)
4.0
心に突き刺さる映画であった。

キング原作の映画は面白くない映画が多い。

キングの小説の魅力は、脇役含め登場人物を細部まで丹念に深く描いて生き生きした命を吹き込み、大きな存在感を与えることで物語に現実味を持たせているところだと思う。

だが映画になると時間的制約が大きくなり、人物描写が浅くなりがちなところが、面白くない映画が多い理由なのだろう。

本作は起こったことを淡々と叙事的に描き、登場人物を物語の1つのピースとして埋没させ、物語進行自体をメインに据えて構成しているように感じる。

そのことで観客も登場人物の一人に仕立て上げられ、恐怖し、絶望し、悲しませられる。いつの間にか観客は霧に囲まれたスーパーマーケットに一緒にいる気分になっているのだ。

ラストは「絶望」とはこのこと、といわざるを得ない状況だ。あと15分早ければ。

さらに主人公が冒頭で見捨てた母親との再会により、その冷たい視線が心に突き刺さる。痛い。

エンドロールのヘリの音がさらに効果的に感じた。

2016/07/20
しぇんみん

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