こたつむり

アルゴのこたつむりのレビュー・感想・評価

アルゴ(2012年製作の映画)
4.2
★ 映画は世界を救う…のかもしれない

ベン・アフレック監督は天才!
と激しく首を振りたくなるほどに完成度の高い作品でした。もうね。全方位に向けて隙がありません。

ここに異を唱えることが出来るのは当事者だけ。確かにイランにとっては黒歴史。歴史的な経緯を踏まえずに一方的な“悪役”とされるのは勘弁できない話でしょう。本作にアカデミー賞を与えてしまうのは僕でも首を傾げたくなります。

でも、受賞してしまうのも納得なのです。
当時の一触即発の緊迫感を再現し、巧みに配置した布石を活かしたカタルシス。それでいて、ささやかな“笑い”も忘れていませんからね。これほどまでに「クソくらえ」が沁みこむ物語はありません。

個人的にはベン・アフレック監督の最高傑作。
彼には社会派の物語のほうが肌に合うのかもしれないですね…とは言え、『ゴーン・ベイビー・ゴーン』はサスペンス、『ザ・タウン』はクライムアクションと作品毎に分野を変えても一定のクオリティを保つのは見事としか言いようがなく。

それでいて主演も務めてしまうわけですからね。やはり、天は二物を与えず…という諺は嘘ばかりです。

あ。でも、本作の難点とすれば。
彼のチャームポイントである“アゴ”がヒゲで隠れていました…むむ。これは減点ですな。まるで肉抜きのハンバーガー、炭酸抜きのコカ・コーラのようなものですよ。

あと、スタッフロールの演出はねえ…。
ちょっと監督さんのドヤ顔を想起してしまったので微妙でした。ええい。胸を張るならば、先にヒゲを剃りたまえ。

まあ、そんなわけで。
娯楽と社会派を兼ね備えた物語。
イランで起きたアメリカ大使館人質事件を通じて、70年代の終わりに満ちていた“死の香り”を感じることが出来るので必見だと思います。

なお、本作を何も考えずに飲み込むのは危険なので、鑑賞後に色々と調べることをオススメします。映画が面白い=その行為が正しい…ではありませんからね。
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