“女は皆、理想の男を追い求める女優”
本当に良い作品は、何十年経っても色褪せない。
現在と過去、リアルと映画のがシンクロして、目まぐるしく場面が変わっていくのに、全ての映像が美しく、緊迫感がある。
ジェットコースターのように、戦前戦中戦後を生きた女優、藤原千代子の人生は、たったひとつの愛、たった1人の画家の男を追いかけて追いかけて追いかけたものだった。
現実の彼女と、色々な役を演じている彼女が交互に、キュートに姿を変えながら出てくるが、どちらの彼女も常に、鍵の持ち主である男性を追いかけている。
超人気女優になっても、結婚しても、彼女は常に満たされず、彼を追いかける事こそが、人生の意味になっいく。
結ばれる事の無い愛の形を、こんなにも一途に、美しく描いた映画があっただろうか?
アニメだからこそできる、宇宙への旅、極寒の北海道への旅。観客は、千代子と一緒に常に旅をしている。
旅の果てにあるものは?、
自分の命の火が消えそうになった時、彼女はきっぱりと言う。
“私は、あの人を追いかけている私が好きだったのよ。”
それこそが、彼女の生きた意味だ。
女はいつまでも、少女時代の憧れを捨てきれない。
愛する男性と結ばれて家庭を築き、母になっても、まだ、何処かで理想の男性を探している。
リアルな自分とは別の、もう1人の自分が探しているのかもしれない。
女は皆、女優であるもう1人の自分をもっている。
藤原千代子のリアルな人生は、”1人の男性を追い続ける女性”の役から降りることはなかった。そして天国へ行っても、それは続く。
だからタイトルが”千年女優”なのか?
または、
“千年女優”とは千代子ではなく、永遠に理想の男性に憧れる、観客の女性1人1人のことなのか?
これから観る方々は、どう思うだろうか?
2週間限定の上映期間は、あと1週間余り。
この名作をスクリーンで観られるチャンスを逃さないで。