田島史也

チャーリーとチョコレート工場の田島史也のレビュー・感想・評価

4.1
我が青春。

久しぶりに観たら、あの時代が甦ってきた。チャーリーと同じ子供時代に、チョコレート工場を夢見て夢中になっていた自分。懐かしくて、温かい気持ちにさせられる。

世界観の作り込みが圧倒的なものであり、一見すると子供ウケのために作られた作品のように思われるが、映画好きでも楽しめるような技巧が凝らされている。例えばオマージュシーンの数々。あまり指摘している人はいないが、ウンパルンパが最初に登場した際、彼らがチョコの湖に浮かび、円を描く様は、ミュージカル映画のはしりとして知られる1933年の『フットライト・パレード』のパロディに他ならない。他にも、『サイコ』とか『2001年宇宙の旅』とか、名作揃いだ。また、冒頭と末尾に添えられた印象的なモノローグも、『アメリ』を思わせる。

用いられた数々の技法もそうである。夜から朝にかけての時間経過を表す風景のショットは、伝統的な技法でありながら実に洗練されていた。ドラゴンボートがトンネルに突入する際のカメラワークと切れ味のあるカッティングが織り成すアトラクション性。アトラクションのモンタージュここにあり、といったところか。映画史や映画理論に立脚し、既に確立された技法に則り、そして名作を引きながら、本作はあらゆる人に楽しまれる大衆娯楽作品として、これ以上ないクオリティを実現させている。


映像0.9,音声0.7,ストーリー0.7,俳優0.8,その他1
田島史也

田島史也