りっく

チャーリーとチョコレート工場のりっくのレビュー・感想・評価

3.7
ティム・バートンがこの映画で生み出したチョコレート工場には“甘味”も“苦味”もある。鮮やかな色彩で飾られている施設、そこで製造される様々なお菓子、さらにそこで働くウンパルンパがまた最高である。

しかし、いくら魅力的な工場の内部を見学しても、それだけでは子供は満足するかもしれないが、大人には少々物足りない感がある。実際本作の最大のテーマはチョコレートよりも大切な物=家族というものをチャーリーがウォンカ、さらには観客に再認識させるものである。そんなテーマは今まで数多くの映画で描かれ、使い回されており、大人にはあまりにも陳腐で、甘ったるい、ただの非現実的な道徳的なおとぎ話にしかすぎなくなる。

だが、本作にはまるでビターチョコのようなほろ苦いブラックな場面が含まれている。人間の欲望の醜さ、そして残虐さや皮肉さが各キャラクターからも感じられる。そんな者たちに待っているのは途中脱落。最後まで邪悪な心の持ち主は救済されない。しかし機械化の波に飲まれて職を失った者や、あまりにも貧しくてチョコレート一枚も代えない者は救済される。この甘味と苦味の程よいバランス。子供も大人も十分に満足できる“チョコレート”に仕上がっている。
https://www.shimacinema.com/2021/05/28/charlie-and-the-chocolate-factory/
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