emily

縞模様のパジャマの少年のemilyのレビュー・感想・評価

縞模様のパジャマの少年(2008年製作の映画)
4.0
時は第二次大戦下のドイツ。父はユダヤ人強制収容所の指揮官。ある日少年ブルーノは有刺鉄線に囲まれた”農場”を見つける。そこで縞模様のパシャマを着た少年シュムエルと出会い友達になっていく。いつもお腹を空かしてるシュムエルに食べ物を持っていき、いろんな話をした。しかしブルーノは引っ越す事になり、シュムエルは行方不明になった父を探してほしいと言い・・

 無知は罪だと思うが、時に知らない事で余計な固定概念を持たなくてすむ。何もしらないブルーノは無邪気に友達が出来たと喜び、”農場”では楽しくみんな過ごしていると信じている。その二人の間には確実に有刺鉄線という大きな壁があるが、だからこそ心を通わし、唯一無二の友達になる。何も知らないブルーノにやがて家庭教師が現実を教えていく。すでに大人達に知識を植え込まれた姉はナチスドイツのポスターを部屋中に飾り、偏った思考をブルーノにも叩き込んでいく。真っ白だった心は真っ白だった思考はやがて大人達の手により染められ、何も知らない子供達の思考を作り上げていくのは大人であることを改めて思い知る。

 そしてその衝撃のラストの皮肉により、本作は大きなメッセージを観客に残すことになる。短い時間の中でそれぞれの立場がしっかり見え、それを子供達の目線で無邪気に描く事で、その現実が、遠い世界で起こっていることでなく、現社会にもしっかり交差するものである事を思い知る。言葉にならない涙が止まらない。悔しさで茫然としてしまうラスト。敵も味方も一人間でそれぞれの事情がある。その現実の残虐さは己の身に起こってはじめて気が付く。失って気が付いたのでは遅いのだ。誰もが蚊帳の外ではいられない。現実に起こってる事は他人事ではないこと。改めてその現実を知る事の大切さを思い知る。
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