ベビーパウダー山崎

死霊伝説のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

死霊伝説(1979年製作の映画)
4.0
三時間版を真剣に見てしまい感服。芸術の域。吸血鬼に変化した子供が窓の外に浮かぶ画。生々しいのにまだ見ぬ世界を創造していくトビー・フーパー、表現者として卓越している。フーパーのどの作品もそうだが、屋敷というか室内の造形がとにかく素晴らしい。人物に近づきながらもどこか冷めている、作り手としてどこまでキャラクターに冷酷になれるか。吸血鬼に杭を打つ終盤も、そのおぞましい攻防を目にしている子供がしっかりと配置されている。この場に第三者の視点があるからこそ恐怖に厚みがうまれる。
街は崩壊し吸血鬼との死闘は続いていく。愛し合った恋人との決着を最後に、もちろん情に流されたりはしない。もっとも厳しく寂しい道を選択していくのがフーパー、だからこそフーパーの映画は美しく尊い。そして、ジェームズ・メイソンはいつも殺されている。