You

ランド・オブ・ウーマン/優しい雨の降る街でのYouのレビュー・感想・評価

3.0
これはロマンス映画
…ではない、、よなあ?
横文字系ダイニングバーのスクリーンで流れてそうな映画。
派手さはなく、しっとりとセンチに温かい。

観た時期が悪かったなあ(おばあちゃん的な意味で)
カーターは何だかんだで孝行者ですよ。


⚠️ 以下展開バレあり ⚠️




生と死を表す上で、フィリスとサラは対照的である。

登場人物が抱える問題のいくつかについては最後まで投げっぱなしですが、それがこの映画のポイントなんだろうな。
フィリスが言った通り。

人間というのは誰もがより良い生き方を死ぬまで探し続けるもの。
そして、
死ぬまで見つからないもの。

サラは克服した。死なない。
だからまだ探し続けなければいけない。
だけど生きている以上、人間は少しずつ成長していくもので、いくつも山積する問題をたったの一つずつしか片づけていくことはできないけれど、一つずつ片づけることができる。
一つ一つ、山を乗り越える。

この物語の中でサラは抱えた問題を一つ二つ乗り越えた。
たったのそれだけ。
でも、確かに乗り越えた。
そしてこれからも、観客の知らない未来の中で乗り越えていく。

フィリスは死んだ。フィリスも一見、解決すべき問題が山積しているように見える。
フィリスはボケかかっている。ズボンを履かなかったりシーツを変えなかったり、食べ物が放置されていたり。
しかしそれで困っているのは誰かと考える。
フィリスだろうか?

「フィリスにまつわる問題」=「フィリスの問題」ではない。
フィリスの社会性の欠如に困らされるのはフィリスの周りの人間(=カーター)であり、フィリス自身は果たしてそれに困難や絶望を感じているだろうか。
「フィリスが問題を抱えている」、それはあくまで、世間体、社会的な視点から、客観的にそう見えるだけだということに気づかされる。

命ある限り山を越えていかなければならない。それが生きるということである。
それはサラだけでない。登場人物たちはみんな、この物語の中では、抱えた問題の全てを解決してはいない。
カーターは失恋を克服しつつある。だけど仕事が上手くいくようになった訳ではいない。
ハードウィック家の母と娘のほつれた糸は解きほぐされたけれど、父親の浮気は止まっていない。
大団円とはいかない。何故なら彼らは人生の真っ最中で、これはそのほんの一部切り取った物語でしかないからである。
まだまだ越えるべき山はたくさんあるが、それでも一歩ずつ前に進んでいる。
人との繋がりと共に。


【このシーン】
フィリスの登場する全てのシーン。
社会性の低下、言動にデリカシーの欠如、突拍子もない受け答え、不意に出る微笑み。
そうかと思えば、別人かと見まがうほどに含蓄のある人生観を朗々と語りだす。
見事に「ボケかかった老人」を演じている。
オリンピア・デュカキス。
正直、すごい。
You

You